†カカベジ†

□気に入らないアイツ
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-…アイツはいつも俺の心をかき乱す-





私立神龍学園は初等部から高等部までエスカレーター式で、今時馬鹿みたいに偏差値が高い学園である。そんな中を頭脳明晰、容姿端麗、さらに運動センスも抜群と尾びれが付くのは只一人しかいない。

「以上で生徒会議会を終える。異論のある奴はいないな?」

他者に有無を言わさない鋭い眼光が生徒会全員を見渡した。全員こくりと静かに頷くばかりで反論しない。反論等しようものなら目の前の生徒会長ベジータにどんな目に合わされるか分からないからだ。

「…なら解散する。とっとと帰宅して期末試験に備えておくことだな」

高飛車な言い方だが、それがベジータなのだと理解している生徒会面々は心に波をたてたりはしない。逆に最近はそれを『ツンデレ』なのだと都合よく解釈している。
何よりベジータはその容姿やカリスマ性から、この男子校の高嶺の花として常に誰からも熱い羨望を向けられているのだ。
彼に少しでも近付こうとして勝ち取った生徒会の座を何より捨てるような事はしない。
その時だった。

「ベジータ!」

「ラディッツ」

がらっと扉を開けた黒の長髪を持つ生徒を皆知っていた。高等部2年でベジータと同じクラスのラディッツである。

「貴様、会議中だったら殺しているぜ」

「そ、そうかもしれねぇけど…!て、今はそれどころじゃねぇんだって!カカロットがまた…!」

その時、バキッと何かが割れるような音がそこにいた全員の耳に届いた。音のした方を見てラディッツもざぁ、と青ざめる。

「……また、あの馬鹿野郎か…」

般若のような形相のベジータが振り下ろした拳の先、つまりは木目の机に亀裂が入っていた。怒りを込めて吐き捨てるようにベジータは言い、ラディッツの前まで歩み、自分より高いその広い額をがしっと鷲掴みにした。

「さっさとあの馬鹿野郎の所に案内しやがれ」
「…………はい」





「だからぁ、オラは此処じゃ喧嘩したくねぇんだって」

学園指定の学ランを着崩した金髪の青年は、自分の真向かいに並ぶ柄の悪い一面に面倒臭そうにため息をついた。
ちなみに通行人達は男達が校門前で自分を待ち構えていた時にはすでにいなかった。おおかた想像出来るような罵倒で追い払ったのだろう。

「うるせぇ!!テメェにやられたこのケリを返しに来たんだ!ありがたく頂戴しろよ!」

「なんかくれんのか?おめぇ実はいい奴なんか?」

「馬鹿かテメェ!んなわけねぇだろ!テメェにやんのはこの拳だ!」

無精髭を生やした男が金髪の青年めがけて飛びかかった。青年の閉じられていた翡翠色の瞳が顕(あらわ)になり、気だるげに拳を構えた時だった。

「そこまでだ!」

凛とした声がぴたりと二人の時間を止める。声の主は校庭から真っ直ぐこちらに向かってくるベジータだった。その額にはくっきりと青筋が浮いている。

「貴様ら、此処が公共施設だという事が理解出来ない程の馬鹿らしいな!いい加減にしやがれ!」

「なんだテメェは…!」

「ベジータっ!」

警戒する男とは裏腹に金髪の青年は先程と違いその瞳をきらきらと輝かせていた。それを見たベジータは二人の前に立ちチッと舌打ちする。

「カカロット、貴様今月だけで事件を起こすのを何回目だと思ってやがる」

「ん〜、分かんねぇや!オラそんな風に考えっの苦手だからよ」

「相変わらず貴様の能天気ぶりには吐き気がするぜ馬鹿ロットが。貴様の事件をもみ消すのに何故このベジータ様が毎回毎回睨みを効かさなきゃならんのだ」

「ユ−トーセーの特権てヤツだなっ」

「……カカロット、貴様いっぺん本気で死んでみるか?」

「いいんかぁ?ユートーセーがそんな事言って」

ベジータから突き刺すような殺気がほとばしる。カカロットは平然としているが、蚊帳の外にされていた男達は息を呑んだ。顔にうっすらと冷や汗さえかいている。
そんな男達にベジータは視線だけ送り冷ややかな声を発した。

「…貴様らも無駄な騒ぎを起こして警察へ連れていかれたいのか?ならばお望み通りにしてやるぜ」

逆らったら殺される、と男達の脳内に一斉にベジータへの恐怖が走る。だがそれがまずかった。本来はカカロットへの報復の為に来たのに、錯乱した男達はベジータへと向かっていった。

「偉そうにしてんじゃねぇぇえぇぇっ」

雄叫びを上げながら男が拳を振り上げる。ベジータは舌打ちして、ぐっと体勢を低く構えた。そして瞬時に隙を見出だし重い一発を喰らわせる。

「が、は…ッ」

「貴様、その程度でこのベジータ様の相手が勤まると思ったのか?」

地面にくの字で座り込む男に仲間達が駆け寄る。ベジータはそれを冷ややかな瞳で見つめた。

「俺の気が変わらんうちに出ていくんだな。…次は喉を潰すぜ」

ベジータの言葉が男達に印象付いたのか、皆一様に去っていった。それを見届けると、今度はカカロットがにやにやと笑いながらベジータを見下ろした。

「あーあ、手ぇ出しちまった。おめぇユートーセーだろ?」

「俺は馬鹿ロットと違って教師どもの信頼は勝ち取っている。いざ問われたら貴様がやったと言えば無罪だ」

「オラのせいかよ、ひでぇなベジータ」

「ふん!貴様の尻拭いをしてやってる俺様への償いだと思いやがれ!」

腕を組み、ベジータはカカロットから視線を地面へと向けた。点々と散っている赤を靴で砂をかけて隠す。

「でも、オラ安心しちまった」

カカロットの暢気な声音にベジータは舌打ちをしてカカロットを見た。翡翠色の瞳が柔和に輝いている。幼少時代から変わらない、宝石のように美しい瞳だ。ベジータはカカロット自身は気に入らないが、この瞳は好きだった。

「おめぇユートーセーってやつになってから、あんまり喧嘩しなくなっちまっただろ?腕落ちてねぇみたいでよかった」

「くそったれめ。そんなくだらん心配は無用だ。俺の目標は貴様を倒す事だからな。いつか叶えてみせる」

「……オラの目標はまだ叶いそうにねぇけどな」

ぼそり、と冷ややかに呟かれた台詞にベジータは硬直した。珍しくも今この場を立ち去りたいとも思っている。気のせいだろうか、頭痛もしてきたようだ。

「なぁベジータ、おめぇ何時になったらオラの恋人になんだ?」

「…貴様も相変わらずしつこい変態野郎だな」

「おめぇが返事しねぇからしつこいんだ」

「黙れ!俺は貴様に何度も何度も拒絶を示しているだろう!」

「諦めたらオシマイじゃねぇか」

「ふざけるな!同姓に対してふざけた性癖を持つ変態が!」

「だから、オラおめぇにしか起たねぇって言ってるだろ?」

「下品な野郎め!」

これ以上の討論は意味がないのだとベジータ自身熟知しているはずなのだが、何故かカカロット相手に冷静さを欠けてしまうのである。そんな子供のように自身にベジータは毎回苛立っていた。

「おめぇも素直になれよベジータ」

カカロットが挑戦的な笑みを浮かべながらベジータを見る。ぎら…と光らせた翡翠の瞳は捕食者のそれだ。

「おめぇもオラの事が好きなんだよ」

「そんなわけない!」

「じゃあ何でムカつく奴を庇ったりすんだ?放っておけば今頃オラは退学だ。オラを庇ったりすっからおめぇ、余計に自分負荷かかってんだろ」

「分かってるなら貴様の尻拭いぐらい貴様でしやがれ!」

「嫌だ。…だっておめぇ、こんな場面じゃなきゃ気を抜けねぇだろ?」

「!」

くしゃり、と男らしい手がベジータの髪を撫でた。一瞬心地好さに気が緩みそうになるも、ハッとして勢いよくカカロットの手を払う。カカロットに触れる度に嫌な気持ちになる。どこか生温く、何かが崩れさりそうな音がするのだ。

「…っ、とにかく、貴様は余計な事を考えずさっさと消え失せろ」

「ベジータ」

「俺は貴様と違い多忙なんだ!いちいち貴様にかまっていられるか!」

カカロットの顔が一瞬しかめっ面になった。その変化にベジータは目を見張るも、ぐいっと何かに腕を捕まれカカロットの広い胸へと引き寄せられたかと思うと、有無を言わさずに唇を奪われる。

「…ッ!」

無理矢理口内へと進入されて、ベジータの逃げ惑う舌をカカロットが逃がすまいと絡み付く。そうした攻防を続けているうちに。

「…っ、てぇ!」

ガリッと嫌な音がした瞬間、ベジータはカカロットを突き飛ばしていた。その眼が爛々と怒涛に輝いているのをカカロットは恍惚と眺める。
凄まじい殺気を秘めたベジータの瞳にカカロットは魅入られていた。

「貴様という野郎は…!くそったれめ…!」

「おめぇが素直じゃねぇから」

「黙れ!」

ベジータはカカロットの頬に拳一発決めるとたったっと走り去った。
カカロットはその後ろ姿を眺めながら、じんわりと口内に広がる鉄の味ににやりと微笑む。

「ベジータ…おめぇはやっぱりユートーセーだな。頭いいけど、硬ぇ」

だが、だからこそオトシガイがあるというものだ。噛めば噛む程に味が出る。
手に入らない苛立ちと独占欲が最高のスパイスになる。

「さってと次はどうやってベジータと会っかな〜」




後書き
まず初めにお詫びを申し上げます!
遅くなり申し訳ありませんでした!
「不良×優等生」とリクエスト頂き約1ヶ月。
出来たものがこの低クオリティOrz 無駄にカカさんが黒いw
これでよろしかったら無人様のみお持ち帰り下さい!
では二万打リクエストありがとうございました!
これからも宜しくお願いいたします!


2010/11/18

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