†カカベジ†
□→RIVAL←
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俺様がNo.1だ!
そう、思っていたのに。
「頑張れー!カカロット!」
「西の頭もフラフラだぜ!」
「へ、へへ…皆も、ああ言ってっしな。そろそろッ、決着、つけよーぜ。ベジータッ」
「はっ…はっ…」
カカロットは背後から声援を受け、獣の様な翡翠色の瞳をベジータに向けてくる。透き通った、強気で楽しくてしかたがないという目。
−苛々する。
「オラ、初めてかもしんねぇ。此処まで楽しませてくれたんはおめぇがよ」
「ふん」
「もっと闘ぇてぇ。…けど、見ての通りだ。へへっ、さっきので身体にガタがきちまってる」
「弱い、奴めッ」
「おめぇだって、もう何発か喰らってんだ。ガタガタきてんだろ?」
その通りだった。カカロットの一発一発が重く鋭く、的確に急所を突いてくる。腹立たしいが、強い。しかし、ベジータは相手に弱い所を見せるなんて、死んでも嫌だった。
「ふんっ!貴様、なんかと違って、俺は柔じゃない!」
「そう言ってもなぁ、おめぇちっこ…」
「黙れ!!」
ベジータは勢いよくカカロットの脇腹に滑り込むと、肘を喰らわせた。しかし彼は「うっ」と呻いただけで、直ぐさまベジータの腕を捻り背中へと回り込む。耳元に、カカロットの吐息と低い声が触れた。
「おめぇ、強ぇ匂いがすんなぁ」
「離れろッ!俺様に触れるんじゃねぇ!」
「…よく見っと、おめぇ可愛いんだな」
後ろで無邪気に笑うカカロットの顔面に、怒りで染まったベジータの頭が炸裂した。拘束を解かれ、ベジータは間合いをとった。
「き、貴様は変態か!」
「いちちっ!」
「俺様は男だ、気色悪い!くそったれめ!」
「オラは思った事を言っただけだ!」
「やかましい!」
ベジータはカカロットに拳をふるう。しかし受け止められ、更に蹴り上げた膝までもがガードされた。ベジータは悔しさに唇を噛み締める。
「いいぞぉカカロットぉ!」
「俺達が西も制覇するんだからよぉ!」
ギャラリーの興奮した熱気が二人を包む。ベジータはそれが欝陶しくて堪らなかった。すると、上でくすっという笑い声がする。
「気になんか?」
「黙れ」
「なぁ、オラおめぇとの闘いを終わりにすんの、もったいねぇんだ」
「だからなんだ」
「今日はお開きにしてよ、今度じっくり二人で会おうぜ」
「貴様とまた会うだと?ふざけやがって、誰が貴様の面なんぞ二度も拝みたいものか!」
「まぁ、そう言うなよ」
ベジータの拳を受け止めた手の平が、力を込めて握ってくる。ごつごつした、大きな手だ。
「は、離せッ!」
「オラ、おめぇが気に入っちまった」
「俺は貴様なんか気に入らん!!くそったれめ!!」
「そんな冷てぇ事言うなよ、おめぇだって力いっぺぇ闘ぇて…気持ちよかったろ?」
「!!」
目の前の翡翠色の瞳が輝く。ベジータは一瞬、たった一瞬だけでもその瞳に魅入ってしまった。
「おめぇゾクゾクしたろ?」
「するわけないだろうっ!」
「オラはゾクゾクしたけどなぁ」
カカロットは笑うと、ベジータの腹部におもいっきり膝をいれた。声にならない呻きと、血液が混じった唾液がベジータの口から漏れる。
「なぁ、ベジータ?」
「き、やすくッ、名前、呼ぶ…なッ」
「おめぇのそのプライド折っちまったら、どんなおめぇが待ってんだろうな?」
「くそ、…ッたれ!」
「見てみてぇな、オラ」
カカロットはベジータの髪を掴むと地面に投げた。身体が痛みと衝撃に軋む。だが、ベジータの視線の鋭さだけは闘う前のそれと同様だった。
−決して折れない、孤高のプライド。
「は、…はッ」
「なぁ、やっぱり勝負はまた改めてしよーぜ」
「ッ…ざけ、るな」
「もってぇねぇもん」
子供がお気に入りの玩具は後にとっておきたい、まるでそんな感じの口調だった。
ベジータは唇を噛み締める。人生初だろう屈辱感に頭が沸騰しそうだった。噛み締めた唇から、赤い滴が筋を描き流れる。
「やっちまえよカカロット!!」
「早く!!」
ギャラリーが沸き上がる。だが、そんな中ギャラリーの期待にカカロットはただ一言冷ややかに言い放った。
「うるせぇよ、オラはもう一度こいつと闘ぇてぇんだ。おめぇら邪魔すんなよ」
ギャラリーが息を呑むのがわかった。ベジータは動かない身体を叱咤して立ち上がる。その様子を見て、カカロットは満足そうに笑った。
「うん!やっぱりおめぇは強ぇ」
「こ、ろ…ッしてやるッ」
「いいぜ、オラを殺しにこいよベジータ」
ベジータは拍子抜けした。カカロットの返事があまりに簡単だったからだ。
殺しにこいだと?何を楽しむような顔で言ってやがるんだコイツは?
「オラの事ばっかり考えて、オラを越えるようにすんげぇ修業して」
カカロットが一歩、また一歩ベジータに近付く。
「オラを殺しにこいよ、倒しにこいよベジータ」
ざっ、ざっ、ざっ
「オラは、おめぇを待ってっぞ」
ざっ、ざっ、ぴた
「ベジータ」
視界一杯に金色が広がったと思えば、続いて可愛らしい音がたった。
……は?
ベジータが固まったのは数秒。再び我を取り戻した時に見たのは、カカロットの唇についた赤い…
「ごちそうさん!」
「…、……ッ!!?」
そしてベジータは理解した。今目の前の男に唇を奪われたのだと。喧嘩で負け、あまつさえこんな屈辱を受けたのだと。
ベジータは決意した。
そして、徐々に遠ざかる背中に叫んだのだ。
「絶対に貴様より強くなって真っ先にぶっ殺してやる!!そして貴様のその下品な唇を俺様が噛みちぎってやる!!覚えてやがれバカロット!!俺様はこのままでは終わらんぞ!!!」
夕立に熔けていくようなカカロットからの返事は、ひらひらと振られた左手だった。
アトガキ
華音様より相互記念リクエスト「ヤンキーカカベジ」。
無理でした!私の技量では無理でした!(ノ_・。)そしてカカロットさんが鬼畜!ベジータが可哀相(ノ_・。)しかし私こんな彼らも好きなんです!!←黙れ
私の妄想では、彼らが拳を交えるうちにたがいタッグを組んでいく((ギャリック砲!!!
こんなやつでよかったら、貰ってやって下さい!
2009/12/28/神威 鞘