†カカベジ†

□最後の晩餐
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『もし、オラが死ぬようなら…』




心臓病を患い闘って、人造人間とやらをぶっ壊してカカロットの奴は死んで逝った。

「馬鹿ロットが」

病室の暗く白過ぎる部屋で、ベッドの上のカカロットに吐き捨てる。
まるで今すぐに起きそうな寝顔だ。

「貴様の命を捨てる馬鹿がどこにいやがるんだ…ッ」

今病室には自分以外いない。カカロットの妻の五月蝿い女は悟飯が休ませている。ブルマ達も付き添いだ。

「貴様は結局勝ち逃げしやがったんだ。…俺様が貴様をぶっ倒して…」

続きは言わない。それはもう叶わない望みなのだから。
ならばせめて供養だ。カカロット、貴様の望みを聞いてやろう。

「…カカロット」

俺は静かに瞼を落とし、耳に蘇る声色を聞く事にした。




「よっ!悪ぃなぁ、ベジータ。おめぇをわざわざ呼んじまって」

「ふん、貴様がいつ都合を聞くような思慮深い奴になったんだ」

突然「今から病室に来てくれ」と呼ばれて俺はやってきた。トレーニングの後だったから青いウェアのままだったが、カカロットの奴にはこの白過ぎる部屋で鮮烈だったらしい。苦笑している。

「おめぇ、やっぱりいつもと変わらねぇんだな」

「馬鹿にしてるのか!」

「違ぇ違ぇ」

「ちっ!貴様の方が不気味だぜ!白い服なんか着やがって!」

「オラも嫌だけどしかたねぇんだよなぁ」

「ふん、こんな世間話をするために俺を呼んだんじゃないんだろう。さっさと用件を言いやがれ」

俺はベッドの横にあった椅子に腰掛けるとカカロットを睨んだ。カカロットは困ったような、なんとも釈然としない笑みを浮かべている。

「オラよぉ、もう……長くねぇんだ」

「…!」

「だから、おめぇにしか出来ねぇ頼み事してぇんだ」

「ふ、ふざけるなッ!」

俺は椅子から勢いよく立ち上がるとカカロットに詰め寄った。あまりの怒りに声が震える。

「貴様をぶっ殺すのはこの俺様だ!惑星ベジータの王子のこのベジータ様だ!」

「はは」

「笑い事じゃない!」

「…笑うしか、ねぇんだよベジータ」

無邪気な笑みが一転して自虐的になる。それはカカロットにしては珍しい、諦めきった笑み。

「笑う……しか……ッ」

「…ふん」

「!」

俺は自らカカロットを抱きしめた。滅多にしない為、奴の目が驚愕に満ちている。

「なんだカカロット、貴様のその欝陶しい笑顔は」

「ベジータ」

「貴様に似合わん。貴様に似合うのは馬鹿みたいに脳天気で、見ていて欝陶しい笑顔だろうが」

「ベ、ベジータ…。それ結構ひでぇぞ」

「貴様が変な笑い方をするから悪いんだ、バカロットめ」

でかい溜息をつくとカカロットが抱きしめ返してきた。普段なら殴るか突っぱねるが、俺は不思議と拒絶しなかった。
時間が少ないと、理解しているからだろうか。

「…本当はな、オラすっげぇ怖い」

「…」

「注射よりも、人造人間よりも、すっげぇ怖いんだ」

「…」

「でも何より怖ぇんは、…皆と、ベジータと逢えなくなっちまう事だ」

「…」

「オラ、一度生き還ってっからよ。二度目はねぇ。それに…」

「俺様は地獄だろうからな、もし転生しても貴様と逢える確率なんて塵に等しいだろうぜ」

口端を上げて笑う。つられるようにしてカカロットも笑った。しかし、それはどこか悲しげで儚い。

「なぁ、ベジータ」

「なんだ」

「オラ、おめぇが大好き」

「い、いきなり何言ってやがる!」

「だから、おめぇにひでぇ事を今から頼みてぇ」

「無茶苦茶な野郎だな」

「オラもそう思う」

「ちっ、くそったれめ」

カカロットは俺の両頬を手で包み、軽く触れるだけのキスをした。甘い痺れが身体に走る。
この快感がもうすぐ失くなるのだと思うと、身体が烈しく荒れ狂いそうだ。
そう思っている間にも、カカロットは真っ直ぐ見つめてくる。
無意識に唾をのんだ。


「もし、オラが死ぬようなら……おめぇがオラを喰ってくれ」


「!!?」

何を馬鹿な事を言い出すんだと、叫び殴ってやりたかった。ついに死の恐怖に頭がイカれちまったのかと。
だが、カカロットの目にははっきりした意思しかなく言葉が出ない。

「…変態野郎が」

「だってよ、そしたらオラおめぇの中で生きてられるじゃねぇか」

「ふん。そういう馬鹿な事なチチの奴に言え」

「おめぇじゃなきゃ、嫌なんだよベジータ」

今度は深く接吻される。背中を叩いて抵抗するが、病気の身体はびくともしやがらない。苛々が募る。

「…はっ」

「ベジータ」

「……ふん」

「オラを、喰ってくれよ」

「……くそったれが」




「…あの時の貴様の魂胆は分かっているぞカカロット」

白い肌を指で撫でながら呟く。

「貴様は強欲だから、死んだ後も俺様を独占したかったんだろう。俺に貴様を喰ったという意識を保たせる為に」

指が奴の唇をなぞる。冷たい、氷のような硬い唇。

「馬鹿ロットが。貴様なんぞ美味くもなんともないし、貴様と一体になるだろ死んでもごめんだと言ったはずだぜ」

そして、指はそのまま心臓の位置に触れた。熱い血潮も鼓動も、もう壊れてしまっている。

「…貴様は最低野郎だ。ゲスだ、変態だ。俺様が貴様の頼みを断れない事を知ってやがって、言いやがったんだからな」

徐々に自ら胸に顔を近付けていく。ひやり、とした冷たい肌に舌を這わせた。

マズイ…

「有り難く思えカカロット。この超エリートの王子ベジータ様が、貴様を喰ってやがるんだからな」

硬い皮膚に歯をたてる。
そして俺はそのままカカロットを抱きしめ、病院から離れた。


最低の食事は、最高の場所で。


後生だカカロット、貴様は次に生き返る時に必ず俺様の近くにいるよう、喰ってやる。


必ず、逢いにこい


それまで貴様の肉体は誰にも渡さん。


貴様は俺のものだ。



アトガキ
カニバ的要素が書きたかったんです!!!
私的にカニバ愛が大好きなんです←←←
たまには暗めにしようかなぁと思いました(笑) 本当に自分の趣味です!!


2010/01/14

 

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