†カカベジ†

□BROKEN!
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−幼い頃から言われた言葉がある。

『お前は俺の息子、常にエリートでなければならん。完璧でなければ意味がないのだ』

冷視線とは矛盾した纏わり付くような声色に、俺はただ嫌悪した事を覚えている。だが誰かを蹂躙する事の快楽を知った俺は、いつのまにやらエリートを目指していた。

−そして完璧が俺の当然となった。

しかし奴はそれを、簡単にぶっ壊しやがったんだ。





誰もいない静寂に満ちた教室は心地いい。俺は一番後ろの窓側の席でゆったりとしたまどろみに意識を委ねる。その時だ。

「おーっす!今日も早ぇんだなベジータ」

「…ちっ、カカロットか」

隣の席に座ったカカロットは相変わらず欝陶しい程無邪気な笑顔を浮かべている。右目に付けられた眼帯は一見痛々しいが、奴の場合別に失明とかの類じゃない。

−二重人格というやつだ。

「いっ?!おめぇまた難しそーな本読んでんだなぁ」

「ふん」

「相変わらず不機嫌なんだな、おめぇ」

「貴様が俺様を苛立たせるんだ、くそったれめ」

「オラなんもしてねぇーぞ」

「貴様のだらし無い恰好、寝癖がついたままの蟹頭。すべてが欝陶しいんだ」

「おめぇまでチチみてぇな事言うなよー。オラまいっちまう」

チチとはカカロットの幼なじみの女らしい。まぁ俺には砂塵も関係ないが。
読みかけの本から視線をずらし、机にぐったりと伏せたカカロットをちらりと見た。
−相変わらず鍛え上げてやがる。
捲られた腕から覗く筋肉が奴の日頃の丹念の賜物を物語る。…くそったれが。

「それよりよぉベジータ」

「…知らん」

「まだなんも言ってねぇーぞ」

「貴様のことだ。どうせ、また課題をやってねぇからノートを見せろとか言いやがるんだろう」

へへっと横で奴が笑う。分かってるじゃないか、と気配が伝わってきた。

「なぁなぁ」

「貴様が悪いんだろうが」

「なぁなぁなぁ」

「…」

「…なぁベジータぁ」

「…」

「…」

「…」

俺はカカロットを断固無視した。するとカカロットは席を立ち、そのまま…

「ベジータ…」

「!?」

無理矢理後ろを向かせられ唇を奪われた。力一杯込めて抵抗するがびくともしやがらない。くそったれめ!

「…ッ、誰かに見られたらどうするんだバカロットめ!!貴様の知能はやはり下等な猿だな!」

「しかたねぇだろ、…ベジータが悪ぃんだ」

「なんだと!?…ッ!」

奴は鋭い視線で俺を一瞥すると、俺の腕を掴み教室を出た。



たどり着いたのは人気のない体育館倉庫。なんでこいつが鍵を持ってるんだ。ああそうか、こいつは部活に入ってやがった。

「何を考えてやがるッ!?」

「さっきから聞いてっとよぉ、おめぇカカロットカカロットって…。それはアイツの名前ぇだ。オラには孫悟空っちゅー名前ぇがあるんだ」

じりじり…とカカロットの奴が迫ってくる。後退する俺の背中が冷たい感覚に触れた。壁だ。

「な…!カ、カカロットも孫も貴様だろう!貴様をどう呼ぼうと俺様の勝手だ!貴様に指図される覚えはない!!」

「違ぇよベジータ…、あいつはあいつ。オラはオラだ…」

どんっと顔のすぐ側を派手な音がして、気付けばカカロットの奴が被さっていた。

「は、離れろ貴様ッ!!近付くなッ!」

「そう怯えんなよベジータ」

「誰が怯えているだと?!ふざけるなよ貴様!!俺様はただこんな所でふざけるつもりないだけだ。今まで無遅刻無欠席だった俺様の完璧に傷がついたらどうしてくれる!」

「そんなん知ったこっちゃねぇよ」

ほら、まただ。
こいつに俺の常識は通用しない。完璧でありたいという俺の思想をてめぇの気まぐれでぶっ壊す。いつの間にか俺の上に立った…俺を蹂躙した気でいやがる。
むかつく野郎だ。

「…どけカカロット、ぶっ殺すぞ」

「嫌だ」

「どけ」

「嫌だ」

「ぶっ殺すぞ」

「嫌だ」

「カカロットいい加減に…ッ!」

しろ、という言葉は飲み込まれた。カカロットの目から零れた温いものが俺の頬につたう。信じられない、こいつはこんな歳になってなんでこうも泣けるんだ?

「みっともねぇ野郎だな。そんなに泣くくらいなら、ちゃんと課題してきやがれ」

「ちげぇよぉッ、確かにオラぁ頭悪ぃけど。オラが課題ぇやってこねぇんは、おめぇと話せるからッ」

「…なんだと?」

「おめぇいっつも完璧完璧ってオラを取り合ってくれねぇじゃねぇか。寂しいんだよぉ」

俺は口があんぐりした。自分でも分かるが、今ひどく間抜けな顔をしているだろう。
たかが二言三言が欲しいだけ?
それは違うだろうカカロット。貴様は寂しいなんて優しいもんじゃないんだろう。

「…つまり貴様の馬鹿な頭は、俺の中の主義まで貴様色に染めたいって言ってやがるのか?」

「しゅぎ?」

「つまり四六時中俺様の思考を支配したいんだろう、このバカロットめ」

ぎくり、と肩が強張る。どうやら聞き慣れない単語は蟹頭の思考をショートしかけらしい。先程まであんなに名前にこだわってたのに。

「この俺が誰かにそう安々と染まると思うのか?」

「思わねぇけど…」

「もちろん貴様も例外ではないぞ。貴様も貴様の中の奴も」

「うっ」

「俺様は俺様だけのものだ。悔しかったら俺様が感嘆するような奴になるんだな」

ようやく自分のペースを取り戻し乱れた制服を直す。立ち上がれば、制服の裾をぐいっと掴まれた。
見上げてくる瞳は犬を思わせる。先程までの冷たさは微塵もない。

「なぁなぁ!オラがその完璧っちゅーんになればいいんか!?」

「なれればな。まぁ、貴様には無理だと思うがな」

「やればできっかもしんねぇぞ?」

「無理だ」

「だってオラ、おめぇに格闘技で勝ってっぞ?」

「ッ!やかましい!!あれはただの偶然だ!いつか貴様には借りをきちんと返してやる!」

触れられたくない箇所に触れられついカッとなる。そう、あれは体育の柔道の話だ。今まで何もかにも無敗連勝だった俺が、唯一勝てなかった相手。

あの時からだ。あの時から俺は貴様に完璧を壊されたんだ…!

そして忌ま忌ましいカカロットが俺の中に住み着いた。それを消去する為に俺は汚名を返還する必要があった。

悔しかった。今まで俺様がNo.1だったから。

勉強だけでは意味がない。
すべてが完璧でなければ意味がない。


…俺の存在意義が、なくなってしまう。

「ベジータ?」

「ッ!」

「どうかしたんか?急に黙っちまって。汗もすげぇぞ」

「うるさいっ!貴様に心配される必要なんかない!」

「どうしたんだよおめぇ、何いきなり怯えてんだ?」

「怯えてるだと?!」

カカロットの大きな手が俺の腕を壁に縫い付ける。真っ直ぐに見つめてくる。まるで心を探られているみたいだ。…カカロットが心に入ってくるような…。

「やめろ!俺に触るな!」

「ベジータ」

ゆっくりと優しく口づけられる。くそったれめ、毎度毎度好き勝手しやがって。その唇を噛み切ってやろうと思うのに、なんでこうも…

−安心するんだ?

「落ち付けよ。オラがなんか言っちまったなら謝るからよ」

「貴、様なんか…大嫌いだ…ッ」

「うん」

「俺様は完璧なんだッ、エリートなんだッ!貴様、貴様なんかに負けるなんて…ッ!」

「そんなにオラに負けたんが悔しかったんか?」

「悔しい、だと?…殺したい程に憎いぜ貴様がな」

自虐的な笑みが浮かぶ。ああみっともない。この俺様が一番嫌いな奴に、こんな所をさらすなんて。だが、カカロットだからこそこんなにさらけ出せたりもする。
もやもやとした交差する矛盾。

「殺したい、か。ははっオラ本当に嫌われてんだなぁ」

「大嫌いだ」

「でもよぉベジータ。普段真面目なおめぇのこんな所も、おめぇの唇の柔らかさも全部大嫌いなオラだけが知ってんだぜ?」

「…ッ」

「なんでだ?それってオラん事を好きだからだよな?」

「な…ッ」

「普通好きな奴じゃなきゃチューしねぇんだぞ?なぁベジータ。オラはおめぇが大好き。おめぇもオラが好き?」

言葉が、視線が、真っ直ぐぶつかってくる。

「貴様なんか」

大嫌いだ。と言うはずなのに、言葉が詰まった。
否定しろ!コイツは俺の完璧をぶっ壊した憎い相手だ!否定しろ!これ以上心の侵入を許すな!

なのに。

「…ッ」

「ベジータ…」

知らぬ間にカカロットの奴が金髪碧眼に変わっている。その眼は蟹頭と違い鋭い。

「もう観念しろベジータ」

「何を言って、」

「いつまで完璧っちゅーやつに囚われとくんだ?」

「!」

「おめぇは今のままで十分だ。これ以上、なんで完璧にこだわんなきゃなんねぇんだ?」

「それは…」

それは完璧こそが目標で、存在意義で。
完璧じゃない俺はいらないのだから。

−そして気が付いた。

そういう、事か。

俺が完璧にこだわったのは存在するためか。
なんて幼稚なんだ、くそったれめ。

「完璧なんかに依存しねぇでさ、オレに依存しろよベジータ」

「ふん。貴様にしては鋭いじゃねぇかバカロットさんよ」

にやり、と俺は笑いカカロットの頬を勢いよく殴った。そして素早く眼帯をずらし、蟹頭にも頬を殴った。

「いちちちちッ!ひでぇよベジータ!二回も殴った!」

「二回じゃない、一発ずつだ。カカロットと孫、どうだ?貴様の望み通りだろう」

俺は立ち上がると体育館の戸口に立った。もうチャイムは鳴っているだろう。初めての遅刻だ。
だが不思議と心が軽かった。
認めたくないが、奴の言葉が俺を完璧から解き放ったらしい。

「…だがな」

「?」

「貴様にまだ俺はやらん」

最後に言葉を残して俺は去った。
背後から聞こえる呼び掛けに時折苦笑しながら。


俺が欲しいなら、もっと追い掛けてこい。
それが俺なりの貴様への宣戦布告だ。






アトガキ
言い訳はしません。私が何を伝えたかったのかきっと訳わからないのは力量不足。

ちなみにネタ提供者カズさんの学パロ達はもっとこう青い果実!ぴんくの花園=萌え←←←

うんだからね

まずカズさんごめんなさい
そして読者様、カズさんの学パロのよさを伝えきれませんでした!!


はいじゃあ軽い説明(笑)
ベジは天才完璧主義。父様が厳しかったんだよ、だから完璧であることに依存したんだよ(笑)生きる理由にしちゃった
カカは対して自由奔放。いつでも真っ直ぐ。
だからベジは羨ましいからカカをライバル視。

で知らない間に心を赦しているのが認めたくなかったんだね(笑)プライド高いから

で認めちゃえばもうほら

開き直る?

カカさんがいてくれたから開き直れた(笑)

まぁあれだ
カカベジしゅき((

ではカズさんに捧げますっ

2010/02/04

 

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