†カカベジ†

□導
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ゆるやなか時の癒しなどもう飽きた。
目覚めよ魂の慟哭、荒ぶる絆よ。





「よぅし出来たぞ!」

テーブルにある【鮮烈な赤】をイメージした花束を見つめ、朗らかに笑って我ながら素晴らしいと自己満悦に浸る。

「やっぱ明りぃ色はいいなぁ」

先週から知り合いのこねで此処【フラワーショップ亀】にアルバイトに来ている悟空はレジに座り腕時計を見た。たしか1時頃だっただろうか?
店長の亀仙人が言うに、昨日急遽フラワーアレンジメントの仕事が電話で入ったらしい。依頼主は男性でただ冷ややかに一言。


『適当でかまわん。ただし品位のなくならないようにな』


とまぁかなりの不遜っぷりだったらしい。しかもどうやら、男性は自ら【幹部】だとかなんとか言ったとか。
その話を聞いた悟空は「断っちまえばいいのに、亀仙人のじっちゃんもよ」と零した。しかし肝心の店長はそれすら笑い飛ばして、続いて軽く言ったのである。まるでちょっと買い物に行ってこいばりに。


『おい悟空、お前が今回のフラワーアレンジメントやってみろ』

『いっ?!』


悟空はもちろんフラワーアレンジメントなんてやったことがない。アルバイトだって花の荷物(これが以外と重くて老人にはきつい)を運んだり、バイクで配達するだけだ。

『めぇったなぁ』

第一喧嘩で鍛え上げた拳はすぐに力を入れると花をしおらせてしまう。綺麗なものが霧散するのは流石に嫌だから、と重労働を自ら率先したのも悟空だった。

『なぁにお前さんもう此処に来て一週間ぐらいたっとるんじゃ。出来る出来る』

そう言って知らず知らずに話は終わってしまったのだ。結局は悟空の担当という事で。

しかしよく考えればそれは信頼という事。

だから悟空は昨夜大学が終わってすぐに今朝までフラワーアレンジメントに取り組んだ。信頼に精一杯の誠意を返したかったから。

「まぁ気に入らなかったらなかったで、オラもまだまだ修業が足んなかったって事だもんな」

机に体を伏せて花束を眺める。
薔薇を中心にデンファレや山茶花(さざんか)が並び、所々リンドウやふわっと小さな白い綿毛をつけた小枝が覗いている。
一見アンバランスなそれらは互いの色を引き出しあい、鮮明な赤がより色気を増す。

「うーん、どんな奴なんだろう」

強い奴がいい。退屈させない…みたいな奴。

(?)

今誰の事を思ったんだ?
この時悟空はそれほど深く考えず、それをただの思い過ごしとして片付ける。

それは、運命が受胎し始めた産声だった。






苛々する。

「っち!フリーザの野郎」

運転席で自分の上司を罵倒する。こういう時社会は非常に面倒臭いとベジータは思った。言いたい事を面と向かって言えない。
別にクビが怖いとか上司が怖いとかではない。ただ、感情論に任せて突っ走るとそれこそ敗北する気がする。
【敗北】
この二文字だけはプライドにかけて許せない。
だからベジータは我慢して上に必ずのし上がり、上司を蹴落とす事を勝利条件とした。
そう思って今まで堪えてきたはずだったが…。

(あの野郎!!この俺様に雑用みたいな仕事させやがって!!何が花束の用意だ!!そんなの専属秘書のザーボン辺りにやらせればいいだろうがくそったれ!)

拳に知らず知らず力が篭りハンドルがみし、と音をたてる。ベジータはとりあえず深呼吸して落ち着くと、目的地【フラワーショップ亀】へと黒いベンツ(会社用)を発進させた。





「ふぁーぁ。オラ暇だぞぉ」
やる事を全て終えた悟空はカウンター席に俯いていた。例の花束を受け取りにくる約束の時間はもうすぐだ。しかし悟空は暇が嫌いなので、すぐの時間も長く感じてしまう。

「亀仙人のじっちゃんも仕入に行ってくるって行っちまうしなぁ」

早く来ないかな、と悟空が思った瞬間である。
キキー!バンッ!という音が聞こえ、入口に人影が立つのが見えた悟空は(来た!)と立ち上がり相手を見た。

「いらっしゃいま」

「せ」という言葉が途切れた。いや、正解には言えなかった。悟空はその人物を魅入ってしまったかのように見つめる。

タイトな紺色のスーツに逆立った髪、視線は誰もを射殺してしまいそうな冷徹さを兼ねている。だがその瞳が微かに悟空を見た瞬間見開いた、気がした。悟空もただじっと相手を見つめる。

血潮が荒れ狂い、何かが身体の奥底から奮えた。嫌な程胸が不条理に高鳴り、喉が果てしない渇きを訴えてくる。

ふいに、悟空の脳裏を閃光が駆け抜けた。


『!貴様を倒すのはこの…様だ!』

『ふん、…だ。俺がNo.1だ』

『カカ…ト』


それは見覚えのないシルエット。逆光で体格しかわからない。しかしこの声は…なんだ?この込み上げる切なさと歓喜は。

情熱は。

「…い、おい!」

「わっ!」

「さっさとその花束の代金を言え」

「え?あ、ああ!」

悟空は慌てて会計を済ます。それを見届けた相手は花束を見て「…ふん」と言うと背を向けた。

「…あ」

行ってしまう。まだこの奇妙な感情の正体を掴んでいないのに。
待て、待ってくれよ!おめぇは…。

「…」

「…………おい貴様」

「え?」

「俺に触るな」

「ん?…あ」

どうやら無意識に腕を掴んでいたらしい。悟空は「わ、悪ぃ悪ぃ!」と笑ってごまかすと彼を見送った。





「あー疲れちまった」
本日のバイトは終了。時計を見ればもう9時だ。普段なら余り余った体力でそうそう疲労は感じない。だが…

「…あいつ、今頃何やってんだ?」

ベッドに横たわる悟空は瞼を閉じ昼間の情景を思い浮かべる。

「名前聞いときゃよかったなぁ」

いや、だがあの雰囲気だ。聞いたところで答えてはくれないだろう。昔からそうだ。

…『昔』から?

「……駄目だ今日のオラはやっぱおかしいや。寝よう」





『お〜い!よっ』

『また貴様か。毎晩毎晩来やがって』

『んなつれねぇ事言うなよぉ』

『ふん!俺は貴様みたいな馬鹿に構う時間がないんだ!』

『またまたぁ。本当は嬉しいくせに』

『な!!き、貴様ぁ!ぶっ殺す!!』

『わっわっ!怒んなよぉ!』

『黙れ!!』

『でもオラそんなおめぇも好きだかんな』

『っ…!!』

『なっ?おめぇもオラん事好きだろ?』

『ば…!!』

『オラはおめぇがでぇ〜好き!なっ、おめぇは?』

『貴様なんか大嫌いだ!!』

『オラは好きだ。……ベジータ』


「…そうだ、ベジータだ」


夢から冷めて悟空は起き上がる。
そうだ、あれはベジータだ。昔離れてしまったベジータ。大好きだったベジータ。よき好敵手だったベジータ。

「…ずいぶん、待たせちまったなぁ」

悟空は自嘲気味に笑うと窓から満月を見上げた。

「もうオラ達はサイヤ人じゃねぇんだな。でもなんでかなベジータ、オラ満月を見るとまだ胸がざわついちまう」

それはきっと血の記憶。

「なぁオラまたおめぇを、好きになってもいいんかな?」

きっと彼は全否定するだろうけど。

「ベジータ…」

窓にうつる青白い月に、悟空はそっと唇を寄せた。




アトガキ
言い訳なしです衝動書きのせいで荒っぽい文章になりましたすみません!!!
今回はAKねサンと盛り上がった記憶喪失をネタにしてみました。

転生してもなお身体は覚えている。

みたいな感じで書きたかったのに結果。

キャラ崩壊
ベジータ出番少ない
文章構成あいたた

うん惨敗。
でも負けないもん!!←は

でこの後悟空はブルマに連絡してベジータを追い掛けるんですねー(笑)もはやストーカーだよ悟空さ。


2010/03/07


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