†カカベジ†
□Siiii...!
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それを見ちまった時
「あちゃー…」
火山の噴火みてぇに怒れるベジータがすんなりと思い浮かんだ。
「あの、な?怒らずに聞いてくれっか?」
欝陶しい。
昼間っから勝手に人の部屋に来て、何だかもじもじしているカカロットにそう思うのは仕方ないはずだ。
「…なんだ」
苛立ちを抑えながら視線は読み掛けの本から外さない。いや、外してはいけないと警鐘が鳴っている。
それから研ぎ澄まされた勘が、奴の言葉の先を聞いてはいけないとも言っている。
だが、そんなことにビビる俺様ではない。
「…あのな?」
カカロットは床に座りながらソファーに寝転ぶ俺を怖ず怖ずと見上げてくる。
「…ちゅーしてたんだ」
「…………………………は?」
「だから、ちゅーしてたんだよベジータ」
「誰と、誰がだ」
そして俺は後悔する。
ああやっぱり聞かなけりゃよかったってな。
「悟天とトランクス」
バリッ!
読み掛けの本が綺麗に二等分された。
あーらら、見事に固まっちまった。
ま、多分こうなるだろうなーとは思ってたけどよ。
「……ベジ」
「詳しく話せ。言葉を抜かしたらぶっ殺す」
…トランクス、今日は家に泊まった方がよさそうだぞ。
それは今朝の事。パオズ山から家に帰った時トランクスが遊びに来てたから、ちょうどいいや!って思って悟天とトランクスにちょっと修業してやった。
するともちろん体中ボロボロになっちまって、昼間っから風呂に入ることになっちまったんだ。オラはチチに怒られながらも、足りなくなった薪を取りに山へ行って帰ってきたんだけど…。
そこには家の影に隠れて、服を中途半端に脱いでチューしてた二人がいちまった。
で、とりあえず風呂沸かして此処にやってきたんだ。
一通り説明してベジータを見たら、あちゃー…怒りのあまり青筋が浮いてる。
「まぁ年頃だしなぁ」
「そういう問題か!ふざけるな!俺は絶対認めんぞ!大体なんで貴様ん家の餓鬼なんだ!?えぇ!?大体野郎同士だろう!?」
「オラ達に似ちまったかなぁ」
「黙れ!」
「いいじゃねぇか別に」
「良くない!!」
ベジータは拳をぎゅっと握りしめると立ち上がり外出…て、おい!まさかベジータの奴!
「ベ、ベジータ!何処行くつもりだっ」
「黙れ!貴様には関係ない事だ!」
「関係あっぞ!おめぇが今オラん家行ったら家壊されちまう!」
「知るか!」
「無茶苦茶だ!」
「黙れ!」
「ベジータ!」
「うるさいうるさいうるさい!そんなに言うなら貴様もこい!」
そうしてオラはベジータにひこずられるように自分ん家に向かうことになった。
で、
「………っ」
「言い訳は聞かんぞ、説明しろトランクス」
「…っ…ごめん、なさい」
「…」
重苦しい空気がカカロットの部屋を包む。あいにく、女は出掛けているらしい。ちなみにあの蟹頭親子はうるさいから外に出した。
視線を下げれば、俯いて正座している息子がいる。
「…謝るくらいなら初めからするな、馬鹿野郎」
「っ、でも、俺悟天が好きなんだっ…!」
ぱっと上げられたトランクスの顔。その瞳に盛り上がる涙の粒に軽く嘆息する。
「おかしいかもしれないけど…っ、俺っ、俺っ」
「…いつからだ」
「え?」
「いつからだと聞いているんだ」
「あ、えと、わかんない。気付いたらその」
気付いたら好きになっていた、か。
ふん、餓鬼のくせしやがって。
「…パパ?」
黙っている俺に不安を覚えたのか、トランクスが見上げてくる。
気持ちは、分からなくもない。やましいだけに。
しかし、ここまで似なくてもいいだろう。くそったれめ。
「…帰るぞ」
「え…」
「聞こえなかったのか!帰ると言ったんだ!」
「え、あ、うん…!」
「うわぁぁぁぁん!」
「よしよし、分かったからもう泣くな!」
よほど怖かったらしく、悟天はオラに抱き着いたまま離れない。あやすように頭を撫でるけどなかなか泣き止まない。
まぁ、あれは確かに怖ぇよな。
着いて早々、悟天を見つけたベジータは一言。
『トランクスを出せ』
それはそれは怒りを抑えて。
「うっ、ひっく」
「父ちゃんびっくりしちまったぞー」
「ご、ごめん、ごめんなさいっ」
「はは。謝る事はねぇ。トランクスを好きになっちまったんだろ?しかたねーよ」
「ひっく、ふぇ…っ」
誰がどう思おうと、好きになっちまうもんは好きになっちまうもんなぁ。
仕方ねーよ。だってオラはベジータが好きだし。
ようやく泣き止んだ悟天を肩に乗せて立つと、ばんっと派手な音をさせてベジータとトランクスが出てきた。
トランクスの目は真っ赤だ。ちなみに悟天はまた固まっちまった。
「邪魔したな」
「いいけどよ。おめぇ達、もういいんか?」
「ふん」
「そっか、話し終わったんかぁ」
どうやら家は壊されなかったらしい。ああよかった。
「…悟天」
「ひゃい!」
恐怖のあまり悟天の声が上擦った。
「貴様はまだまだ弱い」
「…っ?」
おや?
「恋だのなんだのほざく暇があるなら、修業することだな」
「しゅ、ぎょう?」
おやおや?
「今の貴様にトランクスはやれん、くそったれ」
それだけ言うとベジータとトランクスは飛んでいった。
ちなみにオラはさっきからニヤニヤが止まらない。
あのベジータが、あんなに素直になぁ?
こりゃ明日槍がふるかもしれねぇぞ?
「ねぇ、お父さん」
「ん?」
「おじさん、どういう意味だったのかなぁ?」
「修業してみれば、分かっかもな!…さてと」
オラは悟天を降ろすとベジータの軌跡を辿る。
素直でいてくれるうちに、オラ達もちょっとは息子達を見習わねぇとな!
「ベジーター!」
今日は離さねぇぞ!
アトガキ
カカベジと天トラを混ぜた作品を書きたくなりました(笑)
パパ奮闘記!ベジパパは以外と冷静に話しを聞けると思います(笑)
ていうか悟空パパなんてマイペースな!
さすが悟空さ!
そして素直なベジにイチャコラしてやろうとする黒悟空(笑)
2010/05/03