†カカベジ†

□HOPE RABBIT
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知っているか?カカロット。俺達は宇宙一・二を争う最強の戦士なのに、地球人どもより脆弱な部分がある。
煩わしいぜ、くそったれ!
しかしそれは強さの代償だと貴様はほざいていたな。馬鹿野郎。
貴様がいれば、俺がいれば、互いにその部分を補えるとほざいたのも貴様だったな。
なのに、ふざけるな!

なぜ貴様は、

「大…丈夫だ…ベジー…タ」

「カカロット!!」

俺を置いて逝きそうなんだ…!





初めてカカロットに出会ったのは五年前。征服という任務で『地球』に遠征に来た俺は、そこで初めて俺を越える強さを持つ奴と逢った。
サイヤ人の特徴である黒い毛の兎耳と尻尾を持つカカロットに。
最初は驚いた。サイヤ人は俺以外存在しないのだと聞いていたから。
だから余計に腹がたったのかもしれない。

『サイヤ人でありながらなんだその精神は!平和だと!?そんなモノなど何の役にたつんだ?!えぇ?カカロットさんよ!』

当然勝てると思っていたのに…滑稽な程侮様に負けた俺は、プライドにかけて奴を倒すと誓い地球におめおめと残った。

最初は己を磨く為にただひたすら鍛え続けた。その度にアイツは欝陶しい笑顔を浮かべて俺に近付いてきたんだ。

『なぁベジータ知ってっか?あっちの山にはすっげぇでかい魚がいるんだぜ?』

『一緒に修業しようぜベジータ!』

『おいベジータ待てよ!』

『オラ達は宇宙で二人だけのサイヤ人なんだよな』

『ベジータ』

いつの間にか、奴は俺の心にも蹂躙してきやがった。それはサイヤ人の唯一の弱点である『孤独に堪えられない』事を呼び覚まそうとするんだ。
だから俺は頑なに拒絶して否定して、カカロットから遠退こうとするのに。

『オラはおめぇが好きだ!』

真っ直ぐ言葉を視線を意思をぶつけてくるものだから。

『大丈夫だ。オラ達二人で一緒にいれば、オラもおめぇも寂しくねぇ』

優しく暖かく、俺の不安を取り除くものだから。
俺は渋々認めたくないものを認めたのに。


なのに貴様は、病で逝くと言うのか?


「…ベジータ」

しん、と静かなカプセルハウスの中でカカロットの声がする。薬を飲んで落ち着いたらしい。

「ベジータ。オラは大丈夫だから」

「誰も貴様なんぞを心配してない」

「でも、おめぇ泣きそうだぞ」

カカロットのごつごつした手が頬をなぞる様に触れる。伝わる温もり。これが消えて失くなるなんて信じたくもない。

「馬鹿にするなカカロット。俺様が泣くわけないだろう」

「でも夜はオラので泣いて」

「やかましい!相変わらず下品な野郎だな貴様は!」

ベッドに横たわるカカロットに拳を振り上げそうになり堪えた。こいつなら何ともないだろうが、『病人』というイメージが体を制止する。拳を握り抑えて、再びベッドに腰掛けた。代わりに怒りのあまり俺の耳がピンっと立ってしまった。

「ともかく早く治しやがれ。そして貴様に今度こそケリをつけてやる!」

「オラも…もう一度おめぇと力一杯戦いてぇなぁ」

それはあまりにも奴に似合わない諦めた声色で、本当に消えてしまいそうだと錯覚させる。

「っ、たいんじゃない!戦うんだ!貴様はそんな言葉も分からないのか!」

「分かってるさ、ベジータ」

「それに貴様は戦闘民族サイヤ人だろう!?病害に負けるなんて恥さらしもいいところだ。サイヤ人は戦闘に生き戦闘に死ぬ者なんだぞ」

「やっぱり王子様が言うとサマになってんなぁ」

カカロットが笑う。へらへらへらへら、いつもの欝陶しい笑顔を浮かべて笑う。
たったそれだけの事なのに、普段のカカロットを見付けた俺は馬鹿みたいに心が騒いだ。
ほら見ろ、俺はカカロットのせいで心が弱くなってしまったんだ。
だからカカロットには責任がある。
俺の側にいるという大事な責任がある。
だから、だから。

「ベジータ?」

「…」

「どうしたんだ?ベジータ」

「…許さん」

「え?」

ガッと勢いよく橙色の胸倉を掴みあげてそのまま自分へと引き寄せた。柔らかな暖かみが唇に触れる。

「ベジータ…おめぇ…」

「許さん…っ。貴様は、貴様は死んではならんのだっ!貴様を殺すのは俺様だ!」

じゃないと誰がこの冷えた心身を暖める?貴様の体温を知ってしまった俺を凍えさすつもりか?

「くそったれ!…病に負けるなんて侮様な恰好を曝すくらいなら、いっそ」

お前を奪われるくらいなら、いっそこの手で殺してしまおうか。

身体の奥から熱いものが込み上げてくる。血液の流れに逆らって、それは俺の目から頬を滑り落ちていく。
ああ畜生、みっともない!こんな生き恥を曝す羽目になろうとは。
意地でも見られたくなくて俺は俯いた。鳴咽を殺すために唇を噛み締める。

「ベジータ、ありがとう」

優しげなカカロットの声が耳朶に触れたと思った瞬間俺は奴の腕の中にいた。胸元に触れた耳がカカロットの鼓動を伝えてくる。
とくんとくん…と躍動するそれは、まだカカロットは生きているという存在みたいなものでひどく安心した。

「オラ本当は怖かった」

俺の首筋に埋められた唇がぽつりと語りだす。カカロットの長いふさふさした耳が頬を撫でた。

「痛みが来る度に、おめぇとサヨナラしなくちゃなんねぇのかなって思っちまうんだ」

「…」

「最初はよ、すぐ治るって思ってた。だけど最近分かっちまって…もう治らねぇんだって」

「…っ」

「そしたらベジータ、今度はおめぇの事で頭が一杯になっちまった。オラがいなくなったらどうすっのかなって。………だって兎は、寂しいと死んじまうんだろ?」

「分かっていやがるなら」

カカロットを抱きしめる腕に力を込める。どこにも行かせないように。

「死ぬんじゃねぇカカロット」

「ベジータ…」

ゆっくりと視界が反転して、俺は背中越しにぬるいシーツを感じた。それは押し倒されたのだと理解するのに数秒もいらない。

交わる吐息、交差する熱視線。

ああそうだ、もっとこの俺に溺れやがれ。
そして死の恐怖で染まっちまったその思考で俺の事だけ考えろ。

そして、

「カカロッ…ト…ッ!」

生きたいと強く願え。

俺を寂しさなんかで死なせたくないなら。
側にいろ、離れるな。

「好きだベジータっ、好きだ…っ!」

「カカ…っ、俺も、っ!」



だって兎は寂しいと、死んでしまうんだろう?




アトガキ
かず壱様大変長らくお待たせしました!
リクエストを頂いて早何日たったことか…!本当にすみませんでした!

では簡単な説明を。
ベジは地球侵略にやってきてカカさんに返り討ちにあいました。悔しさのあまり地球で修業する事を決めたベジさんに、カカさんがアタック!
そして五年間という長い年月をかけてベジさんをGETしたカカさん

しかしカカさんは心臓病

という話しでした(笑)オチなし(笑)

よろしかったら、かず壱様!
お持ち帰り下さいませ!


2010/05/24

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