†イナイレ†

□こっち向いてよ
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円堂守というサッカー少年は、人当たりが良く誰にでも優しく積極的に接していく。それは酷く心地よくて、まるで羊水に包まれた赤子の気分になる。
それが彼を知る周囲の認識で、俺もそうなのだと思っていた。



「豪炎寺ぃ、もう無理分かんない」

「始めてから5分しか経っていないぞ円堂」

九遠監督から出された課題の上に円堂の額が乗った。全く、一人じゃ出来ないから円堂の部屋で一緒にやろうと言ったのはお前じゃないか。
俺はため息を一つ吐いて自分の課題に集中する。苦手な教科は済ませたから残るは数学だけだ。数学は理科や国語の様にごちゃごちゃしてなく、すっきりとした答えが出るから好きな部類だ。

「豪炎寺ー」

この問いにはさっきの公式を使えば確か解けるはずだ。かりかりとペンを使いノートへ式を連ねていく。

「豪炎寺ってば」

知らない。俺は今自分の事で手一杯だ。
問題というものは元は自力で解かなければならない。いくら他人から答案を教えてもらっても結局は自身の為にはならないのだ。
だからこれは円堂の為だ。

「…」

しん、とふいに部屋を静寂が満たす。いくら円堂でもこんなに大人しくなるのはありえない。もしかして寝ているのか?
ふつふつと怒りが沸いてきた俺は一言言おうと円堂に視線を向けた。

「円…!」

「なんだ?豪炎寺」

にっこりと頬杖をつく円堂の無邪気な瞳が悪戯の光を宿しているのを見逃さない。やられた、と羞恥がみるみるうちに沸き起こる。

「やっとこっち向いた」

「円堂お前、いつからそんなに悪知恵をつけたんだ…」

「悪知恵?違うって豪炎寺」

あどけない子供のような笑顔を浮かべる円堂に何故か冷や汗が吹き出た。何故か物凄く悪い予感しかしない。俺は無意識に手元にあった水が入ったグラスを口へと運んでいた。
こく…と喉が上下して、すっかり生温くなった水が口端から溢れる。拭おうとグラスを机に起いた時だった。

「っ!」

「生温いなこれ」

ぬるり、とした感触と視界一杯に広がった円堂の顔。何が起きたのか、と固まった思考で感触のあった口端に指で触れた。

「でも何でかな、すっごくこの水甘いな豪炎寺!」

「円…っ!」

空いた口が塞がらないとはこの事だ。
今、俺の口端を円堂の舌で舐められた…。
事実を認知した瞬間、俺の顔から蒸気が出てるんじゃないかと思う程火照った。どくんどくんと心臓が高鳴って、身体中の血液が沸騰するんじゃないかと思う。

「豪炎寺、すごい真っ赤。可愛い」

耳元で囁かれて腰あたりにびりびりっと何かが走った。俺は中学生ながらこの感覚を何と言うか知っている。円堂だけから与えられる『快楽』だ。

「馬、鹿な事言うな…ッ!勉強しないなら帰るっ」

俺はそう言うと立ち上がった。帰ると言っても合宿中で泊まる場所は変わらない。自宅に帰るには理由を久遠監督に言わなければならない。
それでもこの場を離れたかった。このままじゃ流されて明日の練習に支障をきたす事は目に見えていたからだ。

「豪炎寺!」

ぐいっと円堂に腕を引っ張られてベッドへと身体が倒れこむ。すかさず円堂が俺の四肢を押さえつけるように馬乗りになった。

「…嫌なら止める。どうする?」

狡いと思う。分かっているはずなのにわざわざ俺の口から求めるなんて。
円堂と付き合い始めて、俺だけが知る欲深い円堂を魅せられて俺がお前を拒めるはずがないのに。

「豪炎、…!」

だからお前の余裕を俺はいつも崩したくて、俺は俺自身を崩す羽目になる。
じんわりと唇から伝わる熱は、先程まで俺の思考を支配していた公式をゆるく溶かしていった。




アトガキ
おっそくなりました!!←
甘甘な円豪というリクエストを無事に叶えられたかは不安なのですが、とりあえず悪戯っ子な円堂をいれてみました!
修也は負けん気が強いので襲い受けさせてみようかと←
兎も角二万打リクエストありがとうございました!!
これからもよろしくお願いいたします!

2010/11/4

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