†@ラス†

□BLUESPRING
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こういう時サッカーを続けとけばよかったな、て後悔する。
そしたら鍛えあげられた俺の脚力でこいつらを。


「なぁ分かる?俺ら腹が減ってひもじいわけよ。兄ちゃんがカモ逃したからなぁ。だから兄ちゃんの財布、俺らにくんねぇかなぁ」

「それとも、その綺麗な顔にこれ以上傷つけられたくねぇダロ?」

「げほ…っ」

十分もう殴ってんだろお前ら。
とか口が裂けても言える度胸は俺にはないけれど。鈍痛でくらくらする意識の中で、圭吾の馬鹿野郎!とひたすら思った。




それは突然だった。放課後、俺が普段通り親友である圭吾と帰宅していた時だ。

「あ!」

「どうした?」

「おい見ろよ圭吾!あれあれ!」

「クレープ屋?」

圭吾は俺が指差す方向を見て呟いた。道路を走る車の隙間隙間に移動販売をしているらしい白いワゴン車が公園でコンテナを開いているのが見える。横には【クレープ】と書かれていた。

「俺ちょうど腹減ってたんだよなぁ」

「勇」

「ん?」

「食べたいのか?」

「ああ食いたいね。アレうまそうだし」

「勇は甘党だもんな」

「うるせぇな。いいだろ別に。圭吾みたく俺の味覚は老けてないの、健全な若者なわけ」

「味覚は老けない」

「…お前変なとこで馬鹿だよな」

「?」

「まあいいや。お前買ってくれよアレ、金渡すし」

いつもなら頷く圭吾は珍しく渋る。それもそのはずだ。何故ならワゴン車に集まっているのは女だけだし、さすがに気兼ねするんだろう。
俺自身もあの中には出来るだけお近づきになりたくないので圭吾に頼んだのだ。

「…俺は甘党じゃない」

「はい圭吾君ごまかさなーい。確かにあの中に行くのは勇気いるよな」

「勇ならあまり違和感ないと思う」

俺無言で圭吾を蹴った。ちょうど弁慶の泣き所を狙って。もちろん疼くまった圭吾は「いきなり何するんだ」とでも言いたげな目線を送ってくる。

「お前が悪い」

「…」

「俺がそういう女みたいって言われるのが凄く嫌いなの知ってんだろ?」

「あ」

「何だよその今気付いたみたいなの。ふざけんなよお前」

「ごめん」

「謝るくらいなら買ってこいよクレープ。誠意みせろ誠意」

「…わかった」

圭吾は立ち上がると眉を潜めて公園へと向かった。俺はその背中を見つめながらとりあえずベンチを捜すことにして少し歩き出す。とりあえず圭吾の姿が見える所までなら離れても大丈夫そうだ。

「ああそれにしても苛々する!」

思いきり女扱いの発言をされた。しかも圭吾に。これがまた他の奴だったらこんなに引きずらないと思う。ただし千晶は論外。

「くそ!俺だってすげぇ男らしいっての!」

例えば、だ。どこぞの美女=祐子先生が不良に絡まれているとする。そこで飛び出すのがこの俺!勇!

「…なぁんてな。展開がベタすぎ」

「や、やめて下さいっ」

「……あ?」

目の前で女性が厳つい男に絡まれている。え?なにこのタイミング良すぎるベタベタな展開。

「なぁ姉ちゃん、俺達と遊ぼうぜ」

「や、やだっ」

もちろんのことながら周囲は見て見ぬふり。人間は自身が1番大事なんだから当たり前だけど。ああなんだろう、こういう時考えてしまうんだ。

あいつだったらきっと…


「何やってんだよあんたら」


こうやって、首突っ込むんだろうな。
ああ俺の馬鹿。




で、今に至る。
暗い路地裏に連れ込まれた俺は二人の体格のいい男に殴られていた。

「ん?お前よく見ればよぉ」

不精髭を生やした男が下品な笑みを浮かべて俺の体を壁へと縫い付けた。ああちくしょう気持ち悪い。

「そこら辺の女よりいい顔してるじゃねぇか」

「なんだよお前そっちの趣味?」

ニート帽を被った男が不精髭に同調するように俺の制服の前を乱暴に裂いた。ちょっと待てよ、この状況ってまさか…。
俺は自身から血の気がざぁぁと下がるのがわかった。

「やめっ…!」

「暴れんなよ。また殴られてぇノカ?」

殴られる痛みが体に染み付いた俺はびくりと肩を震わせた。
すると不精髭は機嫌を良くしたのか俺の腹筋あたりを舌で這う。ぞわり、とした気持ち悪さに生理的な涙が出た。

「やめろっ!」

男達は俺の拒絶すら楽しんでいるようにエスカレートしていく。
なぁ俺が一体何したってんだよ!こんな事されるような事したのか!?気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い!

「…けてっ」

朧げに浮かぶのは


『勇』


「圭吾……っ!」



「勇!!」



それから何が起きたのか。

「勇っ!」

「…圭、吾」

あんまり感情を表に出さない圭吾の、珍しく取り乱した表情が俺の視界いっぱいに広がった。

「勇大丈夫か?!」

「大、丈夫に、見えんのかよ…」

「見えない、な。…ごめん勇」

圭吾は苦渋の表情で今にも泣きだしそうだった。俺は軋む腕を動かしながら圭吾の頬についた血を拭う。そしてそのまま頬を摘んだ。

「よけいなお節介なんだよ」

「!」

「俺男だし。あんな奴ら俺一人で…」

「ふざけるな!」

それは多分、俺が今までで初めて目にした圭吾の怒りだったと思う。

「圭…」

「勇はわかってるのか!?犯されかけたんだぞ!」

まるで悪戯をした子供が母親に怒られてる気分だ。でもなんでだろう。俺はひどく興奮したんだ。

辺りを見回せば、さっきまで俺に群がってた連中は重なって倒れてた。圭吾がやったんだろう。

普段は偽善ぶってるくせに。偽善という仮面を脱いだ獰猛な獣に、俺が圭吾を還らせたんだ。俺だけが。

「勇…」

圭吾の温い舌が俺の頬の傷口を這う。ああこの感触だ。さっきみたいな嫌悪感なんて全然なくて。

「消毒」

「馬鹿だろお前」

俺はなんだか無性に恥ずかしくて視線を下にずらした。すると圭吾の地面についた膝元に白い液体が散っていて…。

「圭吾、クレープは?」

「あ」

「何やってんのお前。俺の金返せよ馬鹿」

「…だって」

「だってじゃないし。お前あれだろ?サッカー部で普段から馬鹿みたいに足鍛えてるじゃん」

「いや、足だけは無理だと思う」

「お前さぁ、今度俺がOne●ieceの漫画貸してやるよ。すげぇ足技使うカマがいるから勉強しろ」

「カマは嫌だ」

「そこじゃねぇよ馬鹿」

「勇、馬鹿って言い過ぎ」

「お前に言える機会なんてそうそうこねぇじゃん」

やっとペースを取り戻せた俺は圭吾の右頬を軽く殴った。もちろん力なんてないわけだから痛みもないはず。代わりに圭吾は驚愕していたけれど。

「俺を女扱いするから罰が当たったんだよ」

「それなら勇は俺をパシリに使ったから当たったんだ」

「神サマもひでぇよなぁー。俺達がやった事と罰の内容が釣り合わねぇっつの」

「もう少しで俺、神様に殺意向けるとこだった」

あまりにも真剣な声音だったから、俺は少し身震いした。なぜな圭吾ならやりかねないと思ったからだ。

「馬鹿お前、洒落になんねぇよ」

「だって」

「なんか今日のお前、だってばっか」

「…勇」

「あ?」

「とりあえず、立てる?」

「なめんな勇様だぜ?ていうか家帰りたい。制服汚れてるし」

圭吾は頷いて俺を立ち上がらせようとした…けど。

「うわっ」

思ったよりも体にダメージが来ていたという事なんだろう。膝から下に力が入らない。

「くそっ」

「……勇」

「笑うなよな」

「笑わない。けど後で俺を殴っていいから」

「は?お前何言って」

次の瞬間。俺の体は宙に浮いて…って。

「何やってんだよ!」

「抱えてる」

「分かってるけどな!ふざけんなよ降ろせ!」

「嫌だ」

すると圭吾は俺の抵抗を止めさせようとするかのように唇を塞いだ。
歯裏をなぞられたり舌と舌を絡められる度に、ぬちゅといやらしい音が鼓膜を触る。
圭吾が俺の口を犯している…。
そう考えただけで腰全体に甘い痺れが走ってズボンが窮屈になる。
名残惜し気に離された唇から銀色の糸が引いていた。

「圭、吾…っ」

「早く帰ろう」

「圭吾っ」

「…勇、帰ったら触るから」

「ん」

俺は圭吾の胸に体を預けたまま、瞼を閉じた。





アトガキ
青春ッテナンデスカ?←

はい。今回リクエストをいただき頑張ってみましたが…あれ、青春ってなに?
青春ではない感じがかなり出てますよね(笑)

とりあえず青春=イチャコラって感じが私の中にあったんですよね。
それからやっぱ定番喧嘩とかね←ぁ
すみません趣味です←

とりあえず、こっこここんなのでよかったら井織様に持ち帰っていただけたら←


2010/04/05


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