†@ラス†

□短編(24より) 桜
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ひらひら、ひらひら

(あ…)

ひらひらひらひら、ぽと

桃色の花弁が昼寝をしていた自分の鼻先にのった。むずむずする。しかしなぜか、退けようとは思わなかった。

(きれい)

上を見上げれば、樹齢何百年(校長談)かの樹にまんべんなく桜が満開に咲いている。風に揺られてざわめく度に、ひらひら、ひらひらと花弁が舞い落ちていく。
儚げで綺麗で、人を惹き付けて離さない。
まるで、

「なにしてんだよ馬鹿」

聞き慣れた、待ち焦がれた声に現実へと戻される。視線を動かせば呆れたような表情が自分を見下ろしていた。

「桜と話してた」

「は?お前本気で馬鹿じゃねぇの」

「うん。俺、勇馬鹿だから」

そう言ってやれば、勇は桜のように真っ赤に染まって俺に悪態をつきだした。うん可愛い。もっとその顔を独占していたい。

「ほんっと、お前って電波」

頭をがしがしとかくのは勇の照れ隠し。どかっと座って体育座りになるのも。

「勇…」

「なんだよ」

ぶす、と拗ねたように尖らせた唇がぷるんと揺れた…気がした。ああやばい、どうしよう。今すぐ抱き締めてその唇から淫語を吐かせたい。

「好きだ」

「〜っ、馬鹿野郎っ」

勇の瞳が揺れてチャンスだと思った瞬間、がぶりと鼻先を噛まれた。驚いて目をぱちくりさせれば、してやったりといたずらっ子な笑顔。唇には桜の花弁がついていて…。
俺は桜の誘惑を受け入れて、キスをした。

「ん、ふ…ぅっ」

以前、お前のキスは荒々しすぎる!と勇に怒鳴られたことがある。それでは女はリード出来ないぞ、と。

「は、ふ…んぅっ」

すましたような声音とは裏腹に不機嫌だった勇の顔。そして今のように蕩けきった果実のような顔。
俺、ギャップに弱いタイプだったのかと一瞬場違いな事を考えてしまう。
ふいに胸をどんどんと強く叩かれて唇を放した。互いの唇の間を名残惜しげに粘着質な銀色の糸をひく。

「馬っ、鹿じゃねぇのっ!誰かに見られたらどうするんだよ!今昼休みなんだぜ!?」

「見られてもかまわない」

「な…!お、お前は見られて興奮する変態かもしれないけど、俺は違う!ノーマル!」

「俺は変態じゃない」

「大体、俺の愛しのマリアに見られたらどうするんだよ!!」

「マリア?この学校に外国人はいなかったぞ?」

「違う!!マリアってのは祐子先生のこと!!」

「…先生は外国人だったのか」

「違…!…あーもういい。お前の天然にはマジ取り合ってらんねぇよ。なんでこんなのが頭いいのかねぇ。世の中不条理だらけ」

勇は溜め息をついて腕時計を見て肩を落とした。そして悪戯を思い付いた子供のようににんまりと微笑む。
俺の経験上、こういう時の勇は。

「なぁ圭吾」

「駄目だ。サボらない」

「まだ何にも言ってねぇだろっ」

「勇。この前呼び出しくらったばかりだろう。しばらくは出ないと」

「ちぇ」

俺は微笑んで、桜色の唇を尖らせた黒猫を宥めようと優しく撫でた。





アトガキ
日記のやつに足した文章。なにこいつら人目をはばからずちゅっちゅかよ!
しかし相変わらず主は天然炸裂だね!!

2010/08/16

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