†良限†

□好き故に
1ページ/1ページ

ぐちゃぐちゃにしてほしい。

「は、ぁ…ッ」

過去の痛む記憶も汚れた魂も人ならざるモノのこの体躯も。何もかもが分からなくなるぐらい、ただただ自身を壊してほしかった。
それは自分が敬愛する正守ではなく、良守その人だけに限は許した。
化け物の自分を愛してくれた、良守に。

「志々尾…ッ、ししおっ!

「すみむ、ら…ぁ!」

少々効きすぎる鼻が、ほとばしる汗と青臭いがどこか男らしい精液の濃い匂いを捉える。それは快楽とともに限に浸入して、細胞の一つ一つを麻痺させていく。甘く、ゆるく、鈍い痛みをもって。
ふいに、良守が限の体内に熱い血潮を解き放った。それはピストンのように限自身からも次いで熱いものが流れる。
荒い息を吐きながら被さってくる良守の重みに、限は胸の内がほんのりと暖かくなるのを感じた。

「…なんかさ」

「なんだ?」

「俺、志々尾に無理させてる?」

淡い月光だけが照らす限の室内でも分かるくらい良守はじっと限を見つめていた。事情後の熱の余韻を浮かばせながらも不安げな視線だった。気配で分かるのだ。

「確かに気持ち良さそうだけど、やっぱりどことなく無理してる気がするんだよね」

「…お前が毎晩のように盛るから身体が疲れるのは事実だ」

「いやそうじゃなくてさ、もっと、こう、メンタルな部分で」

限は良守に分からないように眉間に皺を寄せた。鈍感な良守が時折魅せる洞察力、それもほぼ限に対して威力を発揮されるそれは、限には少々やっかいだった。

「なぁ、志々尾どうなんだよ」

急かすように良守は身を乗り出してきた。夜闇の中でも輝きを失わない大型犬のようなその瞳を、限は眩しそうに目を細めた。
無理は、確かにしている。
自分の生い立ちがメンタルな部分に災いしているのは十分理解していた。
だから正直良守の真っ直ぐすぎる愛は時に限にとって毒と同じく危ういものとなる。どうしたらいいのか、どう応えたらいいのか。全くの未知のものになる。
だとしても、だ。

「志々尾…?」

「お前やっぱり温いな」

「なにー?!」

「俺が無理をしてまで、嫌いな奴といると思うか?」

「!」

普通はそんな物好きはいないだろう。
良守に好かれたいから、初めて誰かに好かれたいと思ったから無理をする。同性愛という壁も通り越そうと努力する。
自分は不器用だから無理をしてでも、良守の愛に少しでも応えたい。
甘い毒に侵されていきたいから。

「墨村、俺は嫌いな奴なんかと一緒にはいない」

「それは俺もだよ。…大好き志々尾」

ちゅ、と可愛らしい音が唇に落とされた。
限は頭から湯気を出す程に赤面し、今度は良守の首に自身の腕をするりと回し口づける。
それは儚い時間だったが、良守を自分と同じく赤面させるには十分だった。

「志、志々尾…!?」

「ふん」

限はそのまま瞼を閉じて睡眠に入ろうとする。数秒後。良守が慌てて志々尾を起こすのは、また別のお話。


(恋人の為にする無理は、苦痛を伴い快楽へと変わっていくのかもしれない)


後書き
久しぶりの更新。
今回は貫通中でしたが、まぁ詳しい描写はないしいいだろっ☆
というわけで全年齢対応!

ゲンゲンはやはり無理してると思うのです。肉体的とかメンタル部分で。しかしながらそれはあれだね、幸せな痛みだねうふふ。

2010/09/10

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ