†良限†
□輪廻浪漫
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「ん…」
朝の日差しが良守の目にささる。寝ぼけた頭でちらっと時計を見ればいつもより早いが、寝直すには辛い時間だ。
諦めて起き上がり頭をふる。おかげで明朝の出来事が鮮明に蘇る。
いきなり帰宅した単身赴任中の兄。
そして連れられた妖混じりの少年。
「はぁ」
大体の今後の予想はできる。正守は志々尾をこの墨村に匿うつもりなのだろう。なぜならこの時代…
『妖混じり捕獲計画』
なんて非常に馬鹿げたものが制定されているのだ。では集めた者達をどうするか。
胸糞悪い話しだが、戦力として捕縛する。
これを思い出す度に結界師として墨村良守として憤怒に駆られる。
「ったく、朝から嫌なこと思い出しちまった」
良守は眉間の皺をほぐすと乱れた寝着を正す。
しかし今日はいつもと違う。いつもなら父が優しく起こしにくるはずなのだが。
「おい」
「うぉぉっ!?」
戸口からかけられた声に勿論ながら良守は飛び上がった。驚愕のあまり高鳴る鼓動を手で抑えながら振り返る。昨日と変わらない服を着た限が鋭い眼光を不機嫌に染めていた。
「お前…」
「頭領が呼んでいる」
限はそれだけ伝えるとさっさと行こうとする。良守は慌てて限の後ろに並んだ。
自分より少し背が高いらしい。悔しい。
いやまだ分からない。自分だってまだまだ成長期伸び盛りなのだから。
…というか。
「おい」
「…」
「おいって」
「…」
「無視すんなよ!」
限が立ち止まり良守を見下ろした。冷たい眼光に一瞬気圧される。
「お前…」
「俺は墨村良守だ!お前じゃね」
ごく…っ
息を呑む、とはまさにこの事だろう。
喉元に突き付けられた鋭い爪が今にも引き裂こうとするようで怖い。
「本当にあの人の弟か?」
「!」
落雷が、落ちたような衝撃が走る。
「昨日能力を見た。だが能力も考察も、あの人より劣っている」
「それは!」
「それと…ぬるいんだよ、お前」
限は変化を解き良守に背を向け再び歩きだす。
残された良守はぎゅっと拳を握りしめた。
そんなこと、分かってんだよ…!
誰かに評価されずとも自身が1番分かっている。自分の実力は正守には到底及ばない。
瞼をぎゅっと閉じれば、侮蔑した視線と辛辣な言葉と。
…過去にあった、幼なじみを傷付けてしまったことが蘇る。
「分かってんだよ…」
強くなりたいと、思っている。
もう誰も傷付けたくなくて。
『ぬるいよ、お前』
「志々尾、限…」
だから余計にアイツに負けたくない。
絶対実力を認めさせてやる。
「やるぞぉぉぉ!!!!」
墨村良守の長所。それは諦めの悪さと根性と優しく真っすぐな心根である。
「良守ー。ご飯だよー」
アトガキ
大正らしさ皆無orz
あ、もう、泣きたい。
てか ゲンゲン爪をいきなり突き付けちゃった(笑)
すみません…大正らしさを追求します。
2010/04/24