記憶のカケラ
□『本当は優しいクセに』
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「ん・・・・・・いたた」
「やっと目ぇ覚ましたかバカモヤシ」
痛みに顔を顰めながら起き上がると聞こえてきたのは愛しい人の声。
本を読みながら隣に座っている神田が静かに呟いた。
どうやら気を失った僕を医務室まで運んでくれたみたいだ。
「ありがとう神田。」
「フン。おかげで折角の休みが台無しだ」
そういって起き上がった僕の身体を押して布団を被せる。
その手つきは荒いけど優しい手。
ポンポンと寝つきの悪い子供にするみたいにされる。
そうされるとまるで魔法にでもかかったみたいに眠くなる
「最近任務で寝てねぇんだろ。おとなしく寝ろ」
「うん。神田?」
「あ?」
―傍にいて
ドキドキしていった言葉は蚊の鳴くような声だったけど。
神田はふわりと僕にしか見せない顔で笑って囁いた。
「ああ。傍にいるから寝ろ」
「本当は優しいクセに」
僕はそう呟いて体温の低い神田の手を握って深い眠りについた・・・・・・