novel

□悲しみは
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「ねえ。前のあなたはもっと、気持ちこもってたのに、最近どうしちゃったの?」



ここは・・・ああ、俺の部屋だ。




そうだ・・あの後、こいつ呼んだんだっけ。



「・・・あたしのこと嫌いになった?」


「ねえ、聞いてる?ちょっと、ねえっ・・・」



ああ、うるせえ。



「ちょっとってば!!」

「ああ?なんだよ、うるせえな。」

「なんだよじゃないでしょ!ちょっと、どうしちゃったのよ?急に呼び出したと思ったら・・」


女ってのはなんでこうなんだ。


「何?」

「何って・・・なんかさ最近、あたしのこと適当に扱ってない?」


どいつもこいつも、人の気持ち考えないで1人で勝手に・・・


「"適当"ってなんだよ。」

「だから、さっきだってあたしを無表情で見下ろしてたじゃない!」

「おまえ、ヤッてるときにニヤニヤ笑えってのかよ?」

「ちがっ・・・ああ、もう、なんでわかんないのかなぁ。」



わかってないのは、どっちだよ。
俺の気持ちも知らないくせに。



「わかんねえよ、女の気持ちなんて・・・。全っ然わかんねえ!」



つい、声を荒げてしまった。
彼女が横で、怯えた目で見てる。


ああ、それでいいんだよ。
俺のこと、とことん嫌いになれ。
そして、早く記憶から消せよ。



「な・・んで、なんで怒るかなぁ・・。」


いつの間にか彼女は涙声で
ぐすん、と鼻をすすっている。



「別に、怒ってねえけど。女ってのはこうも面倒なもんかと思ってさ。」


俺は、ベランダに出て煙草を吸った。
この時期の風は、まだまだ痛い。



「・・は?信じらんない。よく、そういうこと言えるね。」


はは、畜生め。
こんな事言いたくて言ってる訳じゃないことくらい、気づけよな。




「ごめん・・あたしもう、一緒に入れないや。・・・ごめんね。」


「ああ、わかった。」


「っ・・・!あたし、帰る。・・・・・ピアスも置いていくから。」


「・・・ああ。」



部屋に戻りたい。
戻って抱きしめたい。
もう一度、あの身体を抱きしめたい。

2本目の煙草に火をつける。
いつもの煙草なのに今日は、苦い。

俺、何やってんだ・・・







ガチャッ・・



キィーーー・・バタン。
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