銀
□視線の行く先
1ページ/6ページ
*視線の行く先*
ここは副長室。
部屋の主の土方は机にかじりつき書類を仕上げている。
煙草の煙が充満した部屋で、もう二日間くらい机から離れていないそうだ。
少し前から隣で寝転がってる沖田も完全無視。
そういえば近藤さんも朝に眼、真っ赤にしてたなぁ。
沖田は手伝ってやる等とも言えず、そんな事を考えながらほとんど動かない背中を見やる。
さっきまで指で回していたアイマスクはどこかに吹っ飛んだ。
元々眠る気は無かったが、ここまで放っておかれるのも正直面白くない。
「土方さ〜ん」
足で背中を突っつく。
「邪魔すんな」
土方は視線の一つも寄こさずその足を叩き落した。
その間も片方の手は休まず動いている。
「アンタ昼食は食べたんですかィ?」
「んな暇ねぇ」
短い台詞からよっぽど切羽詰っているであろうことが読み取れた。
でもそれ位では引き下がらない。
というより相手の都合は関係なし。何より自分が暇なのだ。