□帰路
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相討ちとはいえ、部下を多く、死なせた事も。
心配、かけたであろう事も。
後悔したところで足りるものじゃない。
謝ったところで許される事じゃない。
全て背負って、生きていくしかない。

「いい加減俺に譲りなせェ」

「はッ、誰が」

「懲りないお人だ」

「お互い様だろ」

笑みが零れる。
何故だろう。
可笑しくて可笑しくて、堪らないのだ。

「アンタが」

急に妙に真面目腐った総悟の声。
それが更に滑稽さを助長する。

「生きてる限り」

笑う俺を、全く気にする事なく総悟が続ける。

「俺だって死ねねェ」

俺の腕を掴む力が強くなる。
真っ直ぐ前を見る総悟の眼には、一体何が映るのか。

「…アンタを殺すのは俺でさァ」


ああ、そうだな


「そうだったな」

動かなかった左手が動いた。

「残念だったな」

持ち上げて、総悟の頭を引き寄せて撫でた。
近すぎて、その表情は見えない。
手に力を入れて、総悟の髪をかき混ぜる。

「こういうときは」

すると総悟は首を振って俺の手から逃れた。


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