お題

□こういう時だけ優しいんですね。
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私は大沢結祈。
いたって平凡な高校二年生であったのは、一ヶ月ほど前…。


今は、伊達政宗のペットという名の下僕になってしまった。

あいかわらず、伊達政宗にはいいように使われている。
そんでもって、学校中のみんなには、私達は付き合っているものと認定されているのである。

最初の頃は、女の子達の中で人気のある伊達政宗が、一人の女とずっといてるってことで、色々と中傷や嫌がらせに遭ったんだけど、ある日それがピタッと止んだのだ。

きっと、伊達政宗が裏で手を回したに違いない…。


(っていうか、あんなのと付き合ってるだなんて、大間違いなのに〜!!
だいたい、嫌がらせに遭ったのもアイツのせいじゃん!)

ワーって叫んでやりたいとこだけど、あいにく今日は、伊達政宗に捕まった日以来の体調不良だ…。

昨日の晩から生理になっちゃって、朝から貧血気味だったんだけど、今日はサボれない授業があったため、休むことが出来なくて今に至っている。



「うぅ…しんどいよ〜」

今、私はお腹を押さえて机に突っ伏している。

こんな時に、伊達政宗が来たらどうしようと一瞬思ったけど、今はそれどころじゃない…。





「Hey!Kitty!来てやったぞ!」

あぁ…。
今、考えていたことが現実に…。

いつものように、騒がしく足音をたてながら、伊達政宗が私に近づいてきた。


「ん?どうかしたか?机に突っ伏してるなんて…」

生理で、お腹が痛くてこうしてるなんて言えない。

私が何も言わないからか、伊達政宗が私の顔を覗き込んできた。

「おっ、お前!顔真っ青じゃねぇか!」

チラリと視線を伊達政宗の方に向けると、珍しく焦っている。
あんな表情、初めて見たかも…。


なんて思ってると、ひざの下に手を差し込まれて、背中に腕を添えられて、ふわっと体が浮いた。


いわゆる、お姫様抱っこされている状態だ。


「ちょ、ちょっと!恥ずかしいからやめてよ!みんな見てるじゃん!」

みんなの視線が、私達の方に集中してるのがよくわかる。



「Shut up!保健室まで運んでやるから、そこで寝てな」
「あ、歩けるから降ろしてよ。保健室だなんて……まさか、こないだの続きとか言わないでしょうね!?」
「はぁ?」

伊達政宗は眉間にしわを寄せて、何を言ってるんだって顔をしている。

保健室と聞いて思い出すのは、伊達政宗に捕まった日の事だ。
女の子と、いいことしてる真っ最中を邪魔しちゃった仕返しを、今しようとしてるのか!?


それだけは、絶対イヤだ!!


抵抗すべく、足をばたつかせる。

「おい!暴れるなよ!落ちたらどうすんだ!
ただでさえ、青い顔してやがんのに」
「だって、変なことするつもりじゃ…」
「誰がするかよ!……お前が具合悪そうだから、ちょっと心配なだけだ…。
だから、このまましていろ…」


そう言うと、伊達政宗はゆっくりと保健室の方に向かって歩き出した。


やだ…。ホントに心配してくれてるんだ…。
なんか、いつもの伊達政宗と違うんだけど…。
ん、なんか胸がドキドキしてきた。
このドキドキって、こないだのドキドキと似てるかも…。

こないだも思ったけど、伊達政宗って細いように見えて、けっこう腕ががっしりしていて筋肉質なんだよな…。
チラッと横に目をやると、シャツのボタンを外して、少しはだけさせて着ているせいか、鎖骨が見えている。
男のくせに、首から鎖骨のラインがキレイだなんて…。
何でこんなに色気を放ってるんだ?
こりゃ、女の子にモテるのもわかる気がする。


…って!!何考えてるんだ私!!
ちょっと、変なことを考えてしまったぞ。


そういや、一応お礼言っておかなきゃな…。


「伊達政宗…。ありがと…」

私がそう言うと伊達政宗は、一瞬左目を見開いたかと思うと、こないだ初めて見た笑顔と同じ笑顔で…

「You're welcome…」




こういう時だけ優しいんですね。
「おい、Full nameじゃなくて政宗でいいぞ、結祈」
(えっ!初めて名前で呼ばれた…。なんかうれしいかも…)
 

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