ホスト篇スピンオフ

□【3】
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「ねぇ、替えのシーツ用意して。それとさ、拘束具もうすこし長いのない? 私がいない時でもトイレと風呂は使えるようにさせたいんだ。汚いのは御免だからね」


「わかりました」


「それとさ田無」


「はい」


「私がアレ抱いたら、お前、何か思う?」


「……何か、とは」


「たとえば、嫉妬とか」


「いえ」


「そうか」


私は何十年も前に一度だけ田無と関係を持ったことがあった。それ以来、なぜか田無は私に絶対服従を誓っている。だから、もしかしたら奴の忠誠心というのは、恋愛感情なんじゃないかと疑ったこともあった。
でもやはり、違うようだ。そんな生易しい感情ではないのだろう。

私は、私のために小指を落とし、その命さえも簡単に差しだしてしまいそうな男のために、しかし、何かしてやろうなどとは思わない。

私は同調しない。恐れない。悔いない。激情しない。泣いたり、怒ったりしない。絶望しない。否、できない。理由は解らない。生まれた時からそうなのだ。だから、すべての事象に理由があると決めつける人間が苦手だ。私には暗い過去もトラウマも存在しない。そんなものは私の所業の言い訳にはならない。

私はただ、自分が楽しいと感じることに素直でいるだけなのだ。






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