ホスト篇
□序
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ネオン街の交差点。
その真ん中で、裸足の少女が一人、踊っている。
行きかう人を捕まえては、同じ質問を繰り返す。
Q 愛ってなんですか?
出勤前のホストはさして嫌な顔もせず、飄々と答えて見せる。
「忘れた。何年か前に捨てたから」
Q 愛ってなんですか?
怯えたような顔をした青年は、絶望色の眼で。
「俺には手が届かないもの。与えることも、与えてもらうことも、赦されないもの」
Q 愛ってなんですか?
青年を捕らえに来た男は、青年の細い首を絞めながら。
「知らない」
やがて駆けつけた警察によって、少女は保護された。
交差点では、何事もなかったかのように人々が流れ始めている。
新宿の、ある夜のことだった。