ホスト篇
□手練手管
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「女騙くらかすのにマニュアルはねぇ。習うより慣れろだ。俺のヘルプにつけてやるから、よく見てろ」
出逢ったその日、俺は土方にそれだけ言うと、自分自身の準備にとりかかった。
開店まもなく来店する客のめぼしはついていた。控室の一角を占めている俺の貢ぎ物置き場を漁り、香水とネックレスを見つけた。蓋を開けただけで顔を顰めてしまうようなドギツイ香水を首筋に振い、訳の解らぬ装飾――針のようなものが中心に向け円を描くようにして並べられている。時々刺さり、痛い――の施されたネックレスをつけた。
十九時。店が開いた瞬間、門番にエスコートされ、一人の客がやってきた。