旅狐の物語
□一、出会い
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「…………眠い」
まだ辺りが暗いころ、葉月は村長に呼び出され小夜村に向かっていた。
恐らく、何時ものように何かしらを手伝わされるのだろう。
手伝いを葉月は嫌ってはいないが、夜が長いこの月夜地方では中々日が出てこないため、体が起きない。
そうなると流石に倦怠感が出てくるものだ。
「着いた………」
何とか重い足取りで小夜村に着く。
こんなに辺りが暗いのにも関わらず、既に村の人達は活発に動き始めていた。
(村長の家は………あ、此処だ)
村長の家は、周りと比べてやや大きい。
流石は村長と言うべきか。
「お邪魔します」
「遅いよ、葉月君。
もう辰の上刻(午前八時から八時四十分位)になってしまったよ」
「すみません、体が中々起きなくて……」
そう言いながら葉月は村長の正面に座り込む。
そんな葉月を見て、村長は溜め息を吐きながら言った。
「駄目ですよ、そんな事を言っていたら。
君のお父さんとお母さんに預けられた方の身にもなってください」
葉月には、親が居ない。
物心がつく前には、もう亡くなってしまった。
葉月の両親が、死ぬ間際に村長に葉月の面倒を見て欲しいと頼