〜哀しき神童の願いごと〜
□深緑の少女と少年の消失
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「頭領、お客様です」
温かい日差しが射す昼下がり、右腕である刃鳥がお茶うけを持って現れた。
「ずいぶんと若い女の子なんですが、どうしますか?」
「いいさ。通して」
年齢的に珍しく思いながら、正守は刃鳥の持ってきたお茶をすする。
しばらくして、現れた少女に正守は目を向いた。
それは十代後半程の少女だった。肌は白く、健康的な元気な身体をしているのだが、正守が驚いたのはその髪と瞳。
頭の上でお団子にしてまとめてある髪。
つり目で強気が感じられる瞳は吸い込まれそうな深緑だったのだ。
「はじめまして、正守さん。ボクの名前は更科 唯(さらしな ゆい)。
ちょっとご挨拶をと思ってね」
どう聞いても目上の者に対する喋り方ではなく、刃鳥に睨まれるがまるで気にしていない。
「では、どうぞ」
正守は机ごしにある座布団に座るように言い、刃鳥にも退室を願った。
「用件はなんですか?」
「助け船のご紹介?」
にゃははっと笑う唯を正守は軽く睨む。
「正守さんは蒼幽狐=iそうゆうき)と言う組織を知っているかい?」
「いや、聞いたことがない」
手を組み、記憶をあさるがそんな名はいくら探しても出てこない。