〜哀しき神童の願いごと〜
□旅の途中で・・
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――ビュオゥッ
わりと大きな風が、屋敷を通り、影で湿った土をなぞった。木の葉たちが舞い、風が去れば、地面に落ち、何事もなかったかのように動かなくなる。
「穢恋」
三つ網を揺らしながら振り帰れば、見慣れた自分の相棒に穢恋は自然と笑顔を向けた。
「黒幽、ただいま〜♪」
黒幽は穢恋の格好を見て、ため息をついた。
「また、派手にやってきたな?」
「大丈夫だよ、例の子供は殺してないから」
ふふっと口に手を置いて意味ありげに笑う。その手にはべっとりと真っ赤な血がついていた。
手だけではない。身体中を赤く染める量の血が、穢恋の身体を色づけている。見慣れた光景に黒幽はため息しかでない。
「帰る途中でね、五歳ぐらいの子供が森で泣いてたの。うるさいから殺しちゃった♪」
あまりにも残酷な言葉を楽しげに口にする、穢恋にとうとう頭痛まで覚えたのだ。
「あまり一般人を巻き込むなよ・・」
「黒幽は甘いね」
「お前が異常なだけだ!!」
穢恋は口を尖らせてふんっ!とそっぽを向く。
黒幽は呆れたまま、塀の外を見れば、暗い木々の間から赤い光がいくつも漏れているのを見て、目を見開いた。