〜哀しき神童の願いごと〜
□宣戦布告
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ふっ、と空へと目を向ければ、悲しいほどに美しい満月…。
古来から、月は未来や過去…。この世の記憶を全て知っているらしい…。
全てと差し出してもいいから…
どうか教えてくれ…
これから俺の未来はどうなってゆくんだ…?
◆
ジー…、ジー…、ジー……
夏の虫が鳴き始め、もうすぐ初夏と言うことを知らせる…。
なんの音もしない闇のような冬の夜とは違う…。生き物たちが必死に生きようとしている夏の夜…。
湖の水面に金箔の城と共に美しい満月が姿を写る。
「これが金閣寺か…」
「久しぶりだな…」
月に照らされ、一層輝きを増している城…。烏森は興味津々で眺める。
どう言う訳だか、気がついた時辺りはすっかり夜になっていた。見覚えのある風景に辺りを見渡せば、修学旅行で来た金閣寺が目の前に立っていたのだ…。
つまり、奈良まで飛ばされたらしい…。
「お前な、どんだけ遠くに来てんだよ…?」
「いいじゃないか…。どうせだからいろんな所を旅して行こう。
そうだな、次はかずら橋でも行ってみるか…」
「Σ徳島かよっ!?」
ツッコミを入れる良守に、烏森はクスクスと笑った。