〜哀しき神童の願いごと〜
□心に秘めた思い
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「時音!寝てなきゃダメじゃない!!」
庭先の緑を堪能していた時音は、静江の慌てた声にゆっくりと振り返る。
「大丈夫よ、お母さん。もうなんともないから…」
「でも、時音は死にかけたのよ?
少しでも休んどかなきゃ…」
一度死にかけた娘に、まだ気が張りつめているのだろう。
泣きそうな静江とは対照的に、時音は力強い笑顔を見せた。
「今まで十分寝てたから…、その分頑張らなきゃ」
もう一度大丈夫と言い聞かせると、再び視線を庭先へと戻した。
この間にも思い浮かぶのは、大切な幼なじみのこと。
(良守…)
こんなにも離れたのは初めてかもしれない。
気持ちを落ち着かせるために、ため息をつこうと息を吸おうとした……
ドガシァァァンッッ!!!
「ゲホゲホッ!!なっ…」
いきなり目の前に砂埃が舞う。
吸おうとした息が一気に吐き出され、むせかえす。
「「何事ですか/じゃあっ!?」」
気がつけば、静江と自分の二人だった縁側は、騒ぎを聞きつけて集まってきた墨村家と雪村家で大所帯になっていた。
「なぜ墨村がいるのです!?」
「騒音が煩くてわざわざ来てやったんじゃろーがーっ!?」