〜哀しき神童の願いごと〜

□莉妥
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「どう言う…こと?」

一通り話し終えた唯に、開口一番時音が尋ねる。

「ゆうさんは、その時死んでしまったのよね?
どうして、蒼幽鬼の黒幽として、今生きてるの?」

唯は沈黙を選んだ。悲しい過去を話し終えて、少し落ち着く時間が欲しかったからだ。
傷心を含んだ息を吐いた。

「ボクは、あの後、ショックで気を失っていたんだ。でも、目覚めた時、隣にいたはずのお兄ちゃんがいなかった。一度村に戻って、形だけのお墓を作ってあげた。
それから、何度も挫けそうになったけど、前に進もうって決めた」

淡々と話す内に、唯は無意識に手で腹部をさすっていた。あの時刺された傷跡がまだ残っている。
正守たちは、黙ってそれを聞いていた。

「異能者について調べるために旅していたボクは、ある時“蒼幽鬼”と言う組織を見つけた。
危ないってわかっていたけど、好奇心で蒼幽鬼に潜入したんだ。その時、黒幽に会った」

「どうして、黒幽がゆうだとわかったんだ?」

過去を聞いた限り、黒幽とゆうは喋り方も雰囲気も違う。合点を見つけるのは難しいはずだ。

「調べたんだよ。いろんな手を使ってね。
でも、黒幽はまるでお兄ちゃんとは違った。死人みたいな顔をして、平気で人を殺めていた」
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