結界の巻物★そのニ

□満月が闇を照らすころ…
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幼き頃より、身体の弱い私の唯一の楽しみは、屋敷に集まる妖を見ることでした。
元々、烏森家は霊感のある者たちが多い一族でしたが、その中でも私はかなり強力は霊感を持っておりました。
ゆえに、妖などの奇異なものたちが集まりやすく、私としては好都合だったのですが、屋敷の者たちに酷い迷惑をかけてしまう時もありました。

ある日、庭先を覗けば一匹の妖がおりました。
私はもっと大きなものを連れてきてほしいと、そのものに願いました。
すると、それはそれは大変なことになってしまい、なぜか妖たちが私を狙っていると言う話になってしまったのです。

「必ずや姫をお守りします」

「某にお任せくださいっ!」

あまたの人が用心棒として、私の身を守ろうとしましたが、皆妖を恐れ、屋敷から出ていくのでした…。

そんなある日…

「今宵より、あなた様の身をお守りいたす、間時守と申します」

その人は間時守と言いました。

いつもならまたですか、と思うだけで気に求めないのですが、どうしても…私はその人から目が離せませんでした…。
なぜなら、その身体に烏の濡れ羽のような黒い衣を幾重にも纏い…、辛そうに引きずっていらっしゃたから…。
私は霊感があるだけではなく、昔から時折、人の感情が形をとって見えるのです。
時守様が纏うそれは、きっと憎しみや怒りからくるものなのでしょう。
毎夜、笑っておられる時も、ただ佇んでおられる時もその衣を辛そう纏っておられるのでした…。


ある日、私が妖に頼んだことでこんなことになってしまったことが彼に見抜かれてしまいました。

それでも妖が見たいと願う私に、時守様はこちらを向いて…

「隙間から見るだけですよ。そして、見たことはご内密に」

と言って、妖を倒しにいってしまいました。
その時、力を使って空へと向かう彼を見て、私は時守様には羽が生えているように思えたのです。

それから…闇に捕われながらも、どこか自由な彼に惹かれずにはいられませんでした。
ずっと家柄と病弱な身体に捕われた私と違って、時守様はどこまでもどこまでもその翼で広い世界を飛んでゆける…。
そう思ったのです…。
だからこそ、私は彼に纏う衣を一枚でも脱がしてあげたくてたまりませんでした…。
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