結界の巻物★そのニ
□夢現の幸福
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※時守×月影シリーズ。
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「母上!」
河原で洗濯物を洗っていた月影は、聞きなれた声に視線をそちらへと移した。
見れば、今年七才になる息子と、夫である時守がこちらへと向かっていた。
「宙心丸、どうしたのですか?」
月影が優しく微笑むと、宙心丸は濡れた身体で月影の胸に飛込んだ。
「宙心丸!母上の着物が濡れてしまう。まず身体を拭かねば…」
「いいのですよ、あなた…」
月影は襷掛けをした腕で宙心丸を優しく包み込む。
幸せそうに目を瞑る宙心丸は、「あっ」と声を上げて飛び上がった。
「母上!この魚わしが取ったのだぞ!」
見れば、宙心丸の右手には大きな鮎が握られている。
「それは凄いですね…。父上のお手伝いをして偉いですよ、宙心丸…」
まだ濡れた髪の毛をなでてあげれば、宙心丸は頬を綻ばせて、もう一度月影に飛び付いた。
「宙心丸、母上はお腹にお子がおるのだ。
もうお前も兄となるのだから、しっかりしなさい」
時守が厳しい言葉を浴びせれば、宙心丸はしゅんとした顔でうなずいた。
自分から離れようとする宙心丸を今度は月影が抱きしめる。
「これ、月影!」