結界の巻物★そのニ
□警告の鐘
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「ぅッ…!」
「良守…?」
かすかなうめき声が聞こえ、時音は進めていた足を止めて、振り返る。
先日、烏森封印の修行から帰って来た本人は、近くの木に持たれかかって、目を閉じていた。
「大丈夫…?気分悪いの?」
足場の悪い地面を早足で走る。
修行場へ向かう山の中で、ひぐらしや油蝉の鳴き声がうるさいぐらいに響く。
浅い息を繰り返して、青白い肌から汗が流れ落ちた。
「大丈夫…。ちょっと立ちくらみがしただけ…」
ズルッ…
持たれかかっていた木を支えに、良守は体制を整えて前の獣道を見た。
木漏れ日の光が明るく道を照らす。
「もう少し…ッ…だから…」
帰路を知らない時音たちを誘導するために、良守が先頭に立って歩き出す。
「あまり無茶はいけないよ、良守君」
皆が汗だくで登る中で、一人長袖にも関わらず、涼しい顔をしているのは開祖・間時守。
「大丈夫ッ…、師匠。
今日はたまたま…気分が悪いだけで…」
目的地へと向かう足取りは重い。
時守は複雑な顔を見せた。
「たまたま…ね…」
目を落としたまま、ため息をつくと、時守は顔色の悪い良守をスタスタと追い抜いた。