結界の巻物

□願いし者の夢の記憶
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夢であって!夢であって!私は何度そう思っただろうか?
辺りを血の色に変えるほどの鮮血が、私の服も紅に染める。
そして、目の前で同じく紅く染まりながら、力無く倒れているのは・・・・・・良守。
すでに事切れていて、彼の手は氷のように冷たい。
秀君や影宮君が、何かしゃべってるけど、今の私には何も聞こえない。

あの日、良守は死んだ。

あの日、体調が少し悪かった私。白尾は見回りに行っていて、一人で月を見ていた。そんな中、私は背後かり近づく邪気と気配を隠せる妖に気付かなかった。
やっと気付いた時には、もう妖はかまのような物を私に振り降ろそうとしていた。《もうダメだ》って思った時、私は誰かに突き飛ばされた。
グシャア!っと音がしたと同時に良守の声が聞こえた。

「結!滅!」

妖は、跡形も無く消え去ってしまった。
いや、そんな事よりも、私は目の前に居る良守を見て氷ついてしまった。
かまによってえぐられた腹部からは、赤い血が止まる事なく、溢れてくる、


私の視線に気付いたのか、良守はこちらを向く。
そして笑ってこう言った。
「時音。怪我ないか?」
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