結界の巻物

□激辛シュークリーム
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アイツの手先の器用さは昔から凄いモノだった。
ほぼ毎日アイツが作ったケーキを食べているあたし。
あんまり言葉に出さないけど、はっきり言ってそこらのケーキ屋さんよりも美味しい良守のケーキ。

いつも感心しながらも、どこか悔しい。
男の良守が料理が出来て、女のあたしが出来ないのはちょっと悔しい。
いや、かなり悔しい。


あたしは妙な対抗心を持ちながら、お菓子の本を手に取った。




「なんで・・?」

時音は半泣きになりながら目の前の物を睨んだ。

「なんなのよ。この黒いスライムは・・」

材料を混ぜて焼けば膨らむんじゃないの!?と、お菓子の本に講義しながら唇を噛み締める。

そこには、食べ物と言うよりも巨人兵に近い物体が怪しい煙を上げていた。
本人はシュークリームと言っているが、周りから見ると絶対に見えない。


「そうよ!!良守に出来てあたしに出来ない訳ないわ!!あたしはもっと出来るのよ!!」

時音さん。ただいまポジティブシンキング中。

それから毎日時音は練習し、雪村家は怪しげな香りが立ち込めていた。
静江は「しばらく甘いモノ?は入らないわね」とげっそりした顔で悲鳴を上げていたとか。
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