結界の巻物
□無くした心に聖なる癒しを
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あれから二日。
良守が暴走して町を破壊した出来事は、普通≠フ大地震として世間の耳に入った。
対して、異能≠フ世界では、良守の底見えぬ力に脅える者や、狙う者、恨む者。
様々な感情を持たせ、良守はたった二日で裏会内の有名人になっていた。
そして、その本人は今・・・。
「良守は!?良守は大丈夫なんですか!?」
当の昔に治療が終わり、良守の治療をしていた部屋から出てきた文弥と絲、治療班の者を見るやいなや、時音は聞く。
「一命は・・・取り止めた・・・。だが・・」
なんとも複雑そうな顔をしながら言う治療班の主任・菊水の言葉に嬉しいはずが、何か嫌な予感がする一同。
「あの少年は・・。心を壊してしまった・・」
一瞬意味が分からなくなる様子が伝わったのか、菊水は再び話し始める。
「強大な力の中で、自分自身への強い拒絶をしたのだろう。
心身共に、ボロボロだった」
そこで口を閉ざす菊水の代わりに文弥が続きを話す。
「良守君の身体には、もう心がない。
あれは今ではただの器でしかないんだ。」
ぐっ・・。
後ろで絲が泣きそうな顔をしている中、文弥は悔しそうに唇を噛み締める。