そなたの巻物

□誕生日おめでとう!
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「んっ・・あれ?」

薄暗い部屋で、時音はゆっくりと目を開けた。
部屋の真ん中に置かれているダブルベッド。いつもなら良守が自分を抱きしめて眠っているはずなのだが・・。

「良守〜?」

桃色のパジャマを着替えて、水色のロングスカートを着た。
寂しさを感じながら、ドアを開ければ、パパンッ!と軽い音が響いた。

「「誕生日おめでとう!」」

クラッカーのカラフルな中身が頭に降り注ぐ中、時音は一瞬思考が停止した。

「良守!?良香!?」

愛する夫と愛娘がニコニコしながら時音に近づく。

「忘れたのか?今日は時音の誕生日じゃねーかっ!」

「サプライズパーティーだよ!」

背中を押されて木造の椅子に腰かける。目の前には良守が作ったであろうごちそうが呆れるほど作ってあった。

「今日は特に腕を振るったぞ!」

「良香も手伝ったんだよー♪」

本人よりハイテンションな二人に、時音は吹き出してしまった。

「ふふっ、ありがとう!あたしすっごく幸せよ!」

花が咲くような笑顔に、良守は時音を優しく抱きしめた。

「俺もすっごく幸せ!時音が生まれてきてくれて本当によかった!」

「ふふっ、バカねぇー」

抱きついたまま離れない良守の背中をぽんぽんと優しく叩き、柔らかい頬にキスしてあげた。

「あたしも、生まれてきてよかった!だってこんなに優しい夫と娘が出来て幸せだわ」

「時音・・!これからも幸せになっていこうな」

良香を抱き上げて、良守は二人に軽いキスをした。

「パパ〜っ!ご飯食べようよ〜!!良香お腹すいた・・」

良守の腕の中で暴れる良香を時音がなだめる。

「そうね、それじゃあ食べようか」

「そうだな。あっ!ちょっと待ってて!」

良香を時音に預け、良守は台所にかけていく。時音は不思議に思いながら、良香を椅子に座らせた。

「じゃじゃーんっ!!特大誕生日チーズケーキ作ったぜ!」

三分ほどたって、やっと出てきた良守の両手にはかなり大きなチーズケーキが乗っている。
それを見た時音は呆れながらも、幸せな気持ちになった。

「もう、バカじゃないの!?そんなに大きなチーズケーキ作ってどうするのよ!あははっ」

「パパすごーい!」

ただでさえごちそうがかなりの量あるのにこんなに大きなケーキまで食べられるのだろうか?

「余ったらまた明日食べればいい。
さっ、パーティー始めるぞー!良香!」

「はーいっ!」

身軽に椅子から飛び下り、部屋の電気を切る。
真っ暗な闇をケーキの上のろうそくが幻想的に照らしている。
良香は見とれてうっとりしていた。

「「ハッピーバースディッドゥーユゥー!ハッピバースディドゥーユゥー!」」

手を叩いてお決まりの歌を歌っている二人。
ようやく歌い上げた時、時音は勢いよくろうそくを消した。

パチパチッ・・

「「おめでとう〜!!」」

部屋に明かりが戻り、三人は幸せそうに笑った。

「よっしゃあ〜!食べまくるぞ〜!」

「まくるぞ〜!」

「良香、良守の真似しない!それにしても美味しい!」

それから三人は幸せの時間を過ごした。


また来年も、再来年も家族で祝おう。
言葉には出さなかったが、みんな同じ気持ちだった。

《終わり》
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