〜哀しき神童の願いごと〜

□神の愛し子
2ページ/13ページ

「ねぇ、良守。何か悩み事があるんだったら何でも言って!あたしいつでも相談にのるから」

そう言った瞬間、無表情だった良守の顔が苦痛の色に変わる。握った拳に力をこめ、何かに耐えているようだった。

「っ・・時音には・・わからない・・!」

下にうつ向いた良守の瞳には、怒りや、哀しみ、悔しさが混じっているよな気がした。
苦しげな良守を見ていて、時音まで哀しくなる。

「良守、なんだったら今日は休んでてもいいよ?」

優しく呟く時音の言葉に良守は唇を噛み締めて、こくんっとうなずいた。

「ごめんな。・・今日だけお願い」

「わかったわ」

時音がグラウンドに向かう際に良守を見た時、情けないとばかりにふるふる瞳を揺らして眉を下げている良守がいた。



―グラウンド―

とぼとぼと、見回りに向かう足取りは重い。時音はため息をつきながら、さっきの良守を思い出していた。

《っ・・・時音には・・わからないっ!》

(あたしにはわからない?)

いや、きっと時音以外の、正守や閃もわかるはずがない。時音の鋭い直感が素早く働く。
わかるのはきっと良守だけだ。

(あたし達にわからない何かが良守を襲っているのかもしれない・・)
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ