〜哀しき神童の願いごと〜
□漆黒の城
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なんとか物の形が確認できる程の薄暗い部屋にいて、良守は一瞬訳がわからなかった。
(どこだここ?)
微かに香る畳の匂いと、障子に和室と言うことはわかるのだが・・。
(しかもなんか知ってる気配がする・・)
全然知らない場所のはずなのに、この感覚はいつも感じているように思えた。
ギシッ、ギシッ・・
不気味な足音が、部屋の前で止まり、障子がスーッと音もなく開いていく。
「目が覚めたか?」
良守の目に写ったのは、あの時出てきた五歳ぐらいの小さな子供。
その姿を見るなり、良守は小さくため息をつく。
「なるほど。ここは烏森の城か」
通りで知ってる気配だと思った。
子供はにっこり微笑むと起き上がろうとした良守のお腹に飛び乗った。
「えいっ♪」
「Σげふっ!?」
肺の中の空気が一気に外に出ていき、良守はケホケホと何度か咳をする。
「烏森〜お前な〜」
「傷は治ったようだな」
烏森の言葉にハッとし、黒装束を軽くずらして胸元を見た。
「・・・・」
ぎゅっと拳に力を込めて、悲しげな顔をする。弓が刺さったはずの胸元には、怪我どころか傷の形跡もなかった。