〜哀しき神童の願いごと〜
□誘拐
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(こんな時間に…誰だ?)
意識がなかったので、正式な時間はわからないが、多分子の刻は回っているはず…。
「逃げるぞ……」
「……………はい?」
突然呟かれた言葉がこれだった。良守がほうけた顔で硬直していると、烏森は良守の手を握って反対側へと走り出した。
「えっ!?ちょっ…、あれただの人じゃねーの!?」
「声を出すな…!いいから来い…」
普段見せない焦った顔でこちらを睨む。
あの者は雰囲気からして危ないわけではなかった。素通りすればいいだろうにこの慌てようななんだろう…?
木々を抜け、セメント造りの道を走り出す。
「なんでっ…、なんであいつが…!?」
「あの人のこと知ってんのか?」
走る速度を速めながら、良守は様子のおかしな烏森に訪ねる。
「あいつは…あの男は……!
「やっと見つけましたよ、殿…」」
闇夜の先に、静かな声が響く。
とたん烏森はビクリと震え、一気に動かなくなった。
「誰だ…!?」
烏森をかばうように前へと出ると、うっすらと影が忍び寄る。
「あぁ、君が良守君か…。今回は悪かったね…」
「……!?俺を知ってるのか?」