〜哀しき神童の願いごと〜
□蝕む声
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血がどばどば出ていた首筋に目をやると、うん、やっぱり。跡も残さず綺麗に完治していた。
身体の重だるさは貧血だろう…。
(……烏森…)
神妙な顔つきで、白を纏った子供を思い浮かべる。
《ごめんな、良守》
(なんで今更謝るんだよ…)
苦しげに息を吐きながら、必死に自分に伝えようとしていた。
あの《ごめん》には、一体どれほどの思いが込められているんだろう。
(そう言えば…)
記憶を巻き戻しながら、久しぶりに蘇る笑み。
(結構楽しかったな…、烏森との旅…)
わがままや滅茶苦茶な言動に脅えたりしたけど、悪くはなかったと今、ここで気づく。
(新たな一面も見れたしな…)
時守の怒りを二人で必死に止めている時を思い出して、肝を冷やしながらクスッと笑う。
きっと、烏森には、烏森の秘めた思いがあったのだろう。
けれど、それを考えるのはまた今度にしようと思った。
どうしてって…?
答えは目の前に変態がいたから。
「だれが変態だぁっ!?」
状況説明文にツッコミ入れないでください、穢恋さん。
(誰と話してんだ…?)
戦闘体制を取りながら、良守は警戒を強める。