結界の巻物
□願いし者の夢の記憶
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そう言い終わると良守の体は、地に落ちていった。 墨村家に上げられる線香の匂い。
と、共に死の悲しみまで感じられる。
屋敷の奥に死装束を着て、白い布団に横たわる少年。その少年は、もう二度と目を開ける事はない。
「良兄!起きてよ!嘘でしょ!?ねぇ!」
「利守。気持ちは分かるけど、今は静かに寝かせてあげよう」
修史は利守の肩を抱く。利守は泣き腫らして、赤くなった目で、修史を見ていた。
「ねぇ、お父さん。なんで?正統継承者は烏森じゃ死なないんじゃなかったの?なんで?なんで良兄が!?うわぁぁぁぁぁん!!」
まだ幼い利守には、大好きな兄の死は辛すぎる事だった。
そんな利守を励ます修史も本当は泣きたかったが、今は我慢する事にした。 布団に横たわる良守は、死んだとは、思えないほどきれいな顔をしていた。
墨村家から、悲しみが消える気配はしなかった。