そなたの巻物
□刻む心と時の喪失
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「用が済んだらさっさと夜行に帰れよ?」
良守の額に軽く青筋が浮かびそうになっているのを見て、正守は軽く笑った。
―ぴきーんっ!
三人の頭に慣れ親しんだ感覚が響く。
「斑尾、妖はどこだ?」
戦闘体制に入り、それぞれの相棒に獲物の位置を聞きだす。
『今、裏庭に向かってるよ!』
いつものように自慢の鼻で得た情報を教え、それを聞いた二人はその場所に向かう。
行こうとした良守は思い出したように「あっ」と声を上げ、その視線は正守へと向けられた。
「兄貴、ぜっっったい!!邪魔すんなよ!?」
プライドが許さないのか、正守が手伝う事を許さない良守。
「はいはいわかったよ」
適当に笑顔と変事をしながら、二人を見送った。
◆
「はぁ、それにしても暇だな」
最初は良守の成長具合を覗こうとしたが、そんな事をすれば怒りで気が散るだろうと予定を変更し、大人しく二人を待っていた。
っと、
―ぴきーんっ!
「あ・・!」
再び妖の侵入を告げる。
二人に任せようと思った正守だが、その考えはあっさり消えさった。
なぜならすぐ目の前にお目当てだろう妖がいたから。