そなたの巻物

□心の欠片を集いし証
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「白尾、あたしちょっと悪寒がするんだけど」

『俺もだぜ、ハニー』

時音と白尾は目の前の光景に背筋が凍る感覚を覚えた。

「兄貴っ!早く見回り行こうぜ!」

「ちょっと待て良守。一応お前病み上がりなんだからな」

良守が正守に笑顔を向けて、着物の裾を引っ張っている。
初めてこの様子を見た時、『夢なら早く覚めて』と現実逃避しかけたのだった。
一見微笑ましい光景だが、馴れと言うものは恐い。
正守は普段の良守に対する態度とは違う接しかただし、良守は記憶喪失になって正守になついてるし。
二人のあまりのギャップに背中に虫が這った。

「お前先に見回りに行って来いよ」

「やだっ!兄貴と一緒がいい!!」

ぶぅっと頬を膨らませる良守に自然と頬が緩む。

「お願いだ。後から必ず行くから先に見回りに行ってて来れ」

正守は良守の頭を優しくなでてやる。
すると良守は膨れっ面だった顔が幸せそうに笑顔に満ちた。

「ん。わかった。早く来いよ」

名残惜しそうに頭から離れていく正守の手を見てから、良守はグラウンドに向かった。
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