単発小説館

□ミネアの初恋
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その感情に気付いた時、私は自分でも驚くほど冷静だった。どんな時でも冷静沈着と言われているだけあって、気付いてしまえば何でもないことだったんだ。

…私はかれに恋していたんだ。我ながら馬鹿なことを…。だってかれの運命の人は…。


人には「運命の人」が存在する。私は、その人が現れたら、自然に恋に落ちるものだろうと思っていた。だけど…まさか自分が「失恋」を経験することになるなんて。

軽く諦めたわけじゃない。でも、私が恋したのは、あなたがあの女性に見せるとびっきりの笑顔。私はあなたの笑顔が好きだから…。あなたに笑っていて欲しい…。

「クリフトさん。」
私は話しかけた。祈るかれに。
「ミネアさん、いっ、いつからそこに?」
かれは驚いて私を見る。祈るかれは何かに取付かれたかのように周りが見えなくなる。そこがまた面白い。
「さっきからいましたが、いつ声をかけようかと思って…。なにをお祈りしていたのですか?」
「そっ、それは…葬ってきた魔物たちの安らかな眠りを祈り…」
かれはうつむき、続ける。
「…我が身の罪を…」

「罪?」
「はい…。実はわたくし、さる高貴な方をお慕いもうしあげておりまして…本来神に仕える身としてはそれだけで充分な罪なのですが…わたくしは嫉妬しているのです。希望の星を。そして苦痛に思うのです。軟弱な我が身を。」

高貴な方…きっとあの女性のことね。

「まぁ、希望の星、勇者様を?しかし、どうして自分を軟弱などと…。」
クリフトは顔をあげまっすぐミネアをみた。
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