単発小説館

□みんながいたから
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 土色の大地に、二つの輪っか。
我が故郷、ホコタテ星が見えてきた。この景色をこんな神妙な気持ちで見るのは3度目だ。

 正直、一度目は、まさか直ぐにあの星にとんぼ返りするとは思っていなかった。二度目は、ルーイ君をあの星に置いてきてしまったのが分かっていたので、直ぐにまた行くことはわかっていたが、まさか社長まで付いてくるとは思わなかった。
 三度目は、もうないだろう。船内にピクミンがいないことは点検済みだから、うかっり連れてきたピクミンを返しに行く…なんて事態は起こらない。

・・・・・。

 ああ、でもようやく家族に会える。妻は怒っているだろうか?娘や息子は、きっと大きくなっただろう。3ヶ月も離れていなかったのだが、子どもの成長は早いから、きっと私は驚いてしまうだろうな。家に帰ったら、この重い宇宙服を脱いで、妻の手料理を食べたい。そしてたくさんのお土産話を聞かせたいな。お土産ー…

「ああ!お土産持ってくるの忘れてた!!」
「おおっ?!」

後ろで驚いた声が聞こえる。社長、寝ていたのか。
「ど、どうしたんだね、オリマー君、急に大声を出したりして…。」
「す、すみません社長。起こしてしまいましたか。あと少しで会社に到着しますよ。」
「おお、ようやく着いたか!!だが、オリマー君、行き先は会社ではないよ。先に病院に行かなくては。」
「あ、そうでしたね。では、ホコタテ病院へ、進路をとります。」

私は、宇宙船の進路をホコタテ病院へととった。あの病院は宇宙船用の駐船スペースがあるから、このまま着地しても問題ないはずだ。

「ところで、オリマー君。さっき言ったお土産とは…?」
「あ、はい、実は休暇に出る時、子どもたちにお土産をたのまれていて…私のドルフィン号には積んであったのですが…あの星で拾ってくるつもりが忘れていました。」
「ほう。あの星のお宝をお土産に、のう。」
「はい。…それで社長、出来たら今積んでいるお宝から少しもらっても…」
「だーめ。これは会社の物じゃよ。オリマー君。」
「…ですよね。」

だめもとで言ってみたが、やはり駄目だったか。まあ、社長は守銭奴の気があるから、期待はしていなかったが。
仕方ない。子どもたちには我慢してもらおう。…はぁ。

 ああ、そうこうしているうちに、病院へついた。ルーイ君は格納庫に居るが、まさか虫の息ってことはないだろうな。ああ、瀕死状態だから似たようなものか。
とにかく、早く彼を診てもらわないと。
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