Shortnovel
□Letters(前編)
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繁華街として賑わう表通りでは無く、裏通りに静かに佇む店。
オレが働いているこの店は表向きは男性限定のカフェ。
しかし裏は男性客相手に店員として働いている男娼を仲介し、高額で売りつける店。
この店では様々なプランが用意されていて、ただ簡単に相手が抜くだけの物や長い時間をかけて擬似恋愛を楽しみながらの物、デートをする物まである。
この日オレを指名したのは初めて来店した客で、天然パーマをした品のよさそうな男性だった。
「初めまして。オレの名前はティキ・ミック。
今日はオレと一日デートして下さい」
「神田ユウです。
今日はよろしくお願いします」
差し出された手を握るとティキ・ミックはその手をひいて歩きだした。
「今日一日オレの事は名前で呼ぶこと。
だからオレもユウって呼ぶよ。あと敬語はやめてくれ。
そして最後は…今日は君の素顔のままで過ごしてくれ」
「素顔のまま…?」
「いつも通りの君でいいってこと!
僕の事はお客さんと思わないで。」
「……分かったティキ」
オレはニコッと笑った。
「嘘の笑顔はやめてくれ」
「!」
「素顔でって言ったろ?…それじゃぁ行こうか!ユウ」
「あ、あぁ…」
(何で、分かったんだ…)