Shortnovel
□Letters(前編)
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入った蕎麦屋は日本特有の木造作りの家屋で、数人のお客さんがただ静かに蕎麦を啜っている音が響く、落ち着いた空間だった。
「オレさ、蕎麦食べるの初めてなんだよね」
出された笊蕎麦を見ながら話すティキは、蕎麦を物珍し気に見ていた。
「ユウは蕎麦好き?」
“ドキッ”
不意に見つめられて高鳴る鼓動。
(相手は客なのに…何なんだよオレ…)
「好きだな…て言うか…好物だし」
「本当に!?それなら良かった!」
子供見たいに無邪気に笑うティキ。
(なぁ、お前は知らないだろうけどさ、オレ…お客相手に自分の好物言ったの初めてなんだぞ…)
「いつもは洋食なんだ…」
「…何が?」
「客が、オレに食わせてくれる物…本当は洋食より和食が良いんだけど、指名率上げたいから好きでも無い飯を大好きって言って……あ、何語ってるんだろうなオレ。
今のは忘れてくれ」
オレは空気を変える為に蕎麦を啜った。
「何か嬉しいな…」
「何が?」
「ユウの本心が聞けて…そんだけユウがオレに心を開いてくれたって事なのかな?」
「…そうかもな。蕎麦湯飲むか?」
「うん。ユウ、乾杯!」
「…乾杯//」