・OTHERS・
□冬の観覧車
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今朝、大竹と大喧嘩をした。
もう、何が原因だったかなんて全然思い出せないんだけど‥‥。
─『冬の観覧車』─
現在、PM7:43。
オレは大竹と二人っきりで観覧車に乗っている。
世界最大の観覧車が出来たんだそうで、オレと大竹はその取材で来ている。
こういう時、同じ仕事をしてるっていうのは厄介だ。喧嘩した相手と、よりによって二人きりで‥‥しかも密室状態‥‥。
オレと大竹の間には、ヘンな緊張感が漂っている。
そりゃそうだ。
今朝の喧嘩の後から、お互いまだ一言も話していない。
いや、それどころか大竹の顔すらまともに見ていない。
それなのに二人きり。
気まずいったらない。
──ホントに参ったな‥‥。
向かい合わせに座っているから、正面を見ると大竹を見てしまう事になるので、さっきからオレは外に視線を向けていた。
しかし、ついにこの緊張感に耐えられなくなって、べつに外が見たいわけでも無いのにちょっと立ち上がって、観覧車の窓に近づいてみた。
「──おっ!」
一面のイルミネーション。
パーク内は元々イルミネーションが施されているせいか、すっかり忘れていたけど‥‥。
今日はクリスマス。
よく見ると、かなり遠くの方まで小さな電灯が色とりどりにチラチラと瞬いている。
クリスマスのイルミネーションは毎年なんとなくは見ていたけど、こんな上空から見たのは初めてだ。
──すげぇ!
「大竹!ちょっと見てみろよ!」
大竹にも教えてあげようと振り返ると‥‥。
大竹は観覧車内の手摺に片腕を絡めたまま、じっと足下の床を見ている。
──何してんのコイツ?
「大竹!こっち来て見てみろって!」
もう一度言うと、大竹の腕に手をかけて、立たせようとする。
「早く見ないと終わっちゃうだろ!」
しかし大竹は全く動こうとしない。