Book、Ss

□切なさばかり込み上げて
2ページ/4ページ



親のいない互いの家で。
誰もいない部室で。
今みたいに 休み時間を抜け出して。


授業開始のベルが鳴る。



「あぁっべくっ…!じゅっ、授業ぅ…きゃう…!」


ジュギョウ ハジマッチャウ!!!

俺の腕にしがみつきながら三橋は細い声で叫んだ。
散々俺に弄られてきたせいか、三橋もこの行為に快感を覚えてきてる。



「数学だったら教えてやるよ」

「ちが、古典…はぁっ」

「三橋…好きっ好きだ三橋、」

「…も、阿部君っキライッ…!!ぅ、ゃアアアァンッ!!」




キライ、と言われて俺は少しショックを受けたが構わず思う存分。
三橋を貪る。


三橋の言いたい事はわかってる。
まだ高校1年の俺達には時間が腐るほどあるってのに。
俺が急かしてるってのを。

三橋はもっと、俺との時間を大切にしたいんだ。もっともっと、ゆっくりに。
これから巡る季節に合わせて、野球の試合も、大会も、キスだって、デートだって、セックスだって。


もっと順序良く、ゆっくりと初めてのステップも踏みたかったろうなと思う。


でも、俺はそれじゃ足りないんだ

三橋



「っ三橋っ好き、好きだ、好きなんだ…!」


もっと、もっと、三橋が欲しくなる。
喉が渇くみたいに 三橋の知らない一面を見たら もっともっと、知りたくなる。

キスするとき少し涙目になってるとか、本気で怒ると口をきいてくれないとか
ここを擦ると堪らなく感じてしまうんだ、とか

「三橋、三橋三橋三橋!!」

「阿部君っあぁ…!」






こんなハズじゃなかったのに




自己主張しないお前を俺が優しくリードして

これからの時間を二人で一つずつ、大切に過ごして



でも




「もっ駄目っだっめ!!あえくっあぁああぁ…!!」





1ヶ月前のあの日 全てが満たされたはずなのに


本当はキスとかセックスとかどうでも良かったはずなのに


好きと言う度キスする度抱きしめる度舌を絡める度セックスする度!!!



切なさばかり込み上げて激しい飢餓に襲われる


もっと三橋を欲しくて
もっと三橋の初めてを独り占めしたくて
俺の事キライになって俺のとこから逃げ出しても
ほかに好きな奴できても
そいつに何もやれるもんがないくらい
三橋の全部が、欲しいんだ


好きだよ三橋。好き、好きだ。

やっかいな男に惚れられたよな、お前。
大した恋愛経験のない俺に加減もわからず、愛されて。



「っみは、し…!」

「んっ…!」










授業開始の、ベルが鳴る。




けだるい体を整えて されるがままの三橋を後ろから抱きしめる形で座り込む。

誰もいない部室。遠く校庭で体育授業の声がする。

三橋は、すこし唇を尖らして、前に組む俺の腕を握りしめる。

「ごめん…」

「……………」

「怒った?」

「……ぉこ、てる…」


目も合わせてくれない三橋が可愛くて、愛しさが込み上げてくる。
肩に顔を埋めると、ビクッと体を強張らせた。



「帰り、コンビニで食い物買ってやるよ」


ピクン 三橋の体が跳ねた


「アイスも、ジュースも、プリンも。…アイスは腹壊すといけねぇから、1個な」

「………から揚げも…」

「ん」


いやいやに機嫌を直す三橋が 急激に恋しくなってまた強く抱きしめる。

そうか、食い物には弱いもんなこいつ


機嫌を損ねても食い物で釣れば直る。

三橋の新たな一面を知った俺は嬉しくなって、やっと目を合わせてくれた三橋の頬にキスをした。




***********オマケ=>
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ