Book、Ss

□切なさばかり込み上げて
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「………で?」

「………………」

バツの悪い顔で放課後。阿部は栄口と二人きりで教室にいた。差し込む夕日に目が痛い。


「たまにしかないミーティングの日に俺は三橋に古典教えなきゃいけないわけ?」

「…わりぃ……………」

「別にね、三橋と何しようが俺はいいよ?三橋と正式に付き合ってるからさ。でもね、俺の家、今親父出張だしいつも姉貴に家事任せちゃってるしさ。たまには手伝いたいんだよね。ミーティングがある、たまには」

にこやかな笑顔を浮かべてるが背後には黒いオーラが渦をまいている。
阿部は何も反論する事が出来ない。栄口は続く。

「三橋に勉強教えるのはいいよ?三橋は被害者だし。ただ、バッテリーの二人が同時に授業サボったらさぁ、大多数は部室かなって思うじゃん?俺探しに行くって言ってた田島や泉を止めるのも楽じゃないんだよね。阿部はそんなの知らないで今日も部室使ってたんだろうけど。」

「…………」



「栄口くっおまた、せ…!」


ガラッとドアが開いて三橋が息を切らせながら入ってきた。
三橋の頬はうっすら赤く、情事の後のせいで瞳も潤んでいた。

阿部は頭を抱えた。


「…阿部、く?」

「気にしなくていいよ三橋。さ、勉強しよっか。」

「あ、ぅん。りがと、栄口君」

三橋はそう言って、阿部の隣に座る。


「じゃあ三橋。教科書ひらいて」

栄口と三橋の勉強時間が始まると俺は用無しだ。
終わるまで俺はサボった数学と英語を自習する。
栄口の教え方は優しくて丁寧だ。三橋も栄口にわからないとこをはっきり伝えている。


しばらく俺が英語の訳文に集中していたとき。





「…………?」



下におろしていた左手に触れたのは

三橋の右手。

「………………」

ちょうど栄口に本文を訳してもらっていて
絡んだ手は机の下で栄口からは見えていない



……………………



知らないフリして教科書を見てるけど
耳まで赤くなっちゃって




くっと込み上げる切なさに耐え切れず三橋の手を握り返す


どうやら三橋も 俺不足に陥るらしい

知らない三橋をまた垣間見てすこしの幸福感に包まれる


英文は家でやることにして今握りしめる体温に集中しよう

俺は静かに目を閉じた





























「…………」
俺、帰ろうかな…


栄口は頭を抱えた
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