Book、Ss

□名前のない気持ち
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「ナイスボール!」

午後7時。夏の空はまだ明るくグラウンドで部活に励む野球部員達を照らしている。
そろそろ、一息つきましょうかと監督は声を呼び掛けた。

「はぁ、三橋。水分とっとけよ!」

「ぁ、うん!!」

篠岡が持って来てくれる差し入れが届くまで地べたに座り込んでたわいもない話に笑いあう。いつも、そんなだった。

「…でさ、水谷相変わらず阿部に冷たくあしらわれてんの」
「そ〜なんだよ、今日も阿部に声かけたら怒られてさぁ、阿部って本当に酷いんだよ」
「どーせお前、数学の宿題見せてもらおうと思ってたんだろう」
「うっ…まぁ、そうだけどさぁ…」
「それでもよく一緒にいたがるよなぁ」
「Mだろ、M」
「じゃあ明日っから名前M谷だな」
アハハハ
「え〜やめろよぉ、んなん笑えねぇって…なぁ阿部?」
「黙れクソM」
「っ酷い!!!」
ギャハハハハハッ!アハハ、おっかし〜!!!

「はは、はっあれ?三橋どうしたの?」
腹のそこから笑う皆の中、三橋は一人泣きそうな顔で遠巻きにそれを聞いていた。
栄口が歩み寄る。
「ぅ、えと…」
「どうしたの?」
「みっはし〜?あー栄口、三橋泣かせた!!」
「っえぇ!?俺!?」
田島が三橋に抱き着いて栄口と距離をとる。他の部員達も三橋に目を向ける。

「三橋何された?栄口に何かされたんか??」
「ち、がくて…その、あぅ……」

ちらり。阿部と三橋の視線が一瞬合った。
え?俺?
阿部が顔を歪めるのを見て、三橋は覚悟を決めたように声を絞りだす。

「みっ…!み、み…!!!」





水谷君の気持ち、わかるよ!!!
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