毎度のことだが、寝台に入った瞬間、喧嘩が勃発する。



「タンタン君、今日こそは…!」

「この前したばっかじゃん。気分じゃねー」

「この前ってもう三日前の話ですよ!昨日もおとついもしてないじゃないですか!」



ごごごと威圧感を出している静蘭に、蘇芳は本能的に身の危険を覚えた。素早く背中を向けるも、後ろから抱き着かれる。


こういうのを倦怠期っていうんですよ、と、静蘭はプリプリ怒っているが、倦怠期の夫婦はまず週に六回も身体を重ねないんじゃ……と思った。


しかし反論すると後が恐ろしいので、蘇芳は口をつぐむ。静蘭はニッコリと満面の笑みを浮かべた。



「で、今日は背面座位なんてどうです?後ろから突かれたい気分です」

「嫌!嫌だっつってるだろ!俺はそういう気分じゃない!やりたいなら自分で抜け!」

「ではこの私に自分で自分を慰めろと?は、笑止千万……」



笑わせないで下さい、と、鼻で笑った静蘭に蘇芳は後ろから抱き寄せられて組み敷かれる。そして、



「…力ずくも悪くないですね」



と、酷薄な微笑を浮かべた静蘭に、悪寒を感じた。こ、これが愛し合う恋人の睦言か!?


逃げようとしても、軍人相手に力で敵う筈がない。脚の間接に体重を掛けられると、もう逆らいようがなかった。はああ、と、諦めたように大きくため息をつくと、



「…つまり、あんたには仕事に疲れた恋人を労る気持ちがないわけね」



そう呟いた。その瞬間、顔面に軽い衝撃。不意打ちの殴打に蘇芳は言葉もなく寝台に崩れ落ちる。


何故殴られたのか分からず目を白黒させていれば、襟首を掴まれて顔を引き寄せられた。今にも唇が触れそうな距離。こ、今度は頭突き…!?と、呆然としている蘇芳に、静蘭は不機嫌そうに一言。




「…お疲れの様子だから、でしょ?」




だからご奉仕してあげてるんですよ、と、拗ねたように呟いて、唇を塞いできた恋人に(な、なんて歪んだ愛)とア然としながら、蘇芳はもう抵抗しなかった。









逃げても無駄なんです
(それは最大の苦労と最大のノロケ)


END

蘇芳×静蘭

攻めよりも受けが優勢な関係大好き!^^




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