けいおん

□泣き虫ハニィ-
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泣き虫ハニィー






隣に温もりがないのがこんなにも淋しいなんて知らなかった。たった三日一緒にいないだけで死んでしまいそうなぐらい辛い。そういえば――…、窓の外から朱色の空を見ながら考えた。こんな長く会わない日はあっただろうか?気付けば隣にいた。学校だって同じだし、家だって近い。会わない日が三日続くなんてこれまでなかったからなのか心に大きな穴が空いたように虚しかった。三日前から田井中家はものけの空。家族全員でお墓参りだそうだ。最初はしかたない、大丈夫。たった三日だし。なんて腹を括ったのにも関わらず事実一日で耐えれなかった。この三日間は全く私に色がないようにさえ思えた。バカバカバカバカ。別に律が悪いわけじゃないけどそうやって言うことしか当たる術がない。ああー涙が出そうだ。窓の外から目線をずらして今度はベッドにダイブ。ギシギシと軋む音が鳴る。ピンクのハート型のクッションに勢いよく顔を埋めた。このクッションはお気に入りだ。律が初めてくれたプレゼントだから。当初と変わらぬフカフカのクッションは汚れないように定期的に洗ってるしいつもそれを枕にしたり抱きしめたりちゃんと使ってる。律がこの部屋にいるときはむしろ律がこの枕を使ってるためか、そのクッションに涙が染みてしまうのはやっぱり嫌だけど、今一番に律を感じられる。やばい、やばいよ。余計泣けてきてしまう。もー、早く帰ってこい馬鹿ー。



















ブー、ブー。振動がベッド伝いに届いた。それにゆっくり浮上した意識。あれから寝てしまったらしい私はまだ覚醒しきれていない。ゆっくり双眸を上げてクッションの隣にあった携帯を手に取りディスプレイを見た。―― 新着メール一件。その表示よりも私の目線が先捉えたのは時刻だった。11:00、――…… ボーッとする頭が一気にフル回転。あれから6時間も立っていた。やらかした。そう思いバッと上半身を上げようとした、けどそれは私のお腹にある違和感に阻まれた。え?っと思いつつ携帯が置いていなかった側の方を見遣れば見慣れた茶色の髪。いつもの黄色いカチューシャはそこにはなく少しくせっ毛な柔らかい髪が目の前にあった。

(……律!!)

おこさないようにそっと身体の向きを変えた。私のシャツを掴むその手を離してしまうのはなんか惜しい気がしたけどこのほうが律の顔が見える。スースー、と安息な寝息を立てる律がどうしようもなく可愛い。前髪あるとなんか違くみえるなぁー。暫くまじまじと見ていて実感する。そうか今私は律と一緒にいるんだ。同じ空間で二人っきりなんだ。そう思えばあとは簡単。嬉しさが込み上げてきて先程と違う涙がボロボロ零れ落ちた。

「り、つ」

久しぶりに呼ぶ名前。どうしようもなく愛しくて何回も名前を呟いた。律が起きたらどうしよっか?取り合えず抱きしめて欲しい、なんか今なら素直に甘えられる気もする。いつもなら言わない言葉だって抑えられない衝動で出てしまうだろう。起こさないようにゆっくり顔を近付けた。チュッと小さなリップ音がしたと思えば直ぐに唇は離れた。ま、今はこれでね?勘弁してあげるよ。









涙がきらり、空からぽつり









        2010.0621:泣き虫ハニィー












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